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フィリップス東京で開催中の植島コレクション展で見る、作品収集の意義と楽しさ

昨年2月から約600点の作品をコレクションした植島幹九郎。そのコレクションから21点の作品を精選して紹介する展覧会がフィリップス東京のオフィスでスタートした。

展示風景より、手前の壁面は左からジェイド・ファドユティミ《A Patchwork Trail》(2022)、カタリーナ・グロッセ《Untitled》(2022)

 事業家・投資家として多彩な顔を持つアートコレクター、植島幹九郎。昨年2月よりわずか1年3ヶ月のあいだにコレクションした作品の点数は600点という驚異的な数に達している。単純計算で月平均40作品、1日あたり1.3点以上の作品を購入しており、世界的に見ても稀なケースだと言える。

 そんな植島のコレクションから21点の作品を精選して紹介する展覧会が、5月10日にフィリップス東京のオフィスで始まった。会期は6月2日まで。

 植島は美術手帖の取材に対し、約6年前から装飾の目的で作品を買っていたが、空間がすべて埋まった後に作品収集を一旦休止したと明かす。ここ数年で事業の拡大に伴いオフィスの空間が増え、昨年から作品収集を精力的に再開したという。

展示風景より、左からアグネス・マーティン《Untitled》(1995)、シアスター・ゲイツ《Slaves, Ex Slaves》(2021)

 今回の展覧会では、アグネス・マーティン、ゲルハルト・リヒターなどの巨匠から、エイドリアン・ゲニーやジェイド・ファドユティミ、工藤麻紀子などの中堅・若手作家の作品が並んでいる。展示作品の選択基準について、フィリップス東京の代表・服部今日子は「なるべく(植島さんが)直接会ったことがあるアーティストを中心に選んだ」と説明している。

展示風景より

 ギャラリー、オークション、オンラインなどあらゆる手段で作品を購入している植島だが、彼にとって実際にアーティストと会って作品の制作意図について言葉を交わすことがアートコレクションの醍醐味だという

 昨年からは日本のみならずソウルやロンドン、パリ、ヴェネチア、香港へと収集のために赴いており、それぞれの旅の思い出は、現地でギャラリストやアーティストとの交流を通じて築いてきたコレクションにも織り込まれている。

展示風景より、左からエイドリアン・ゲニー《Impossible Body 4》(2022)、奈良祐希
展示風景より、ベルナール・フリズ《Coam》(2002)

 植島は現在、自身のウェブサイトやInstagramでコレクション作品を多言語で公開・発信することに取り組むいっぽう、北参道のプラベートスペースでは約250点の作品を展示。また来年には渋谷で一般向けのミュージアムの開設も計画しているという。

 フィリップスの服部は、購入した作品をコレクターだけでなく、様々な人に公開して共有し合うことは貴重な機会だと話す。「コレクションには決まりがなく、プロセスも自由。それぞれの作品にまつわる様々な思い出を楽しみながら、作品収集を続けることの楽しさを、本展を通じて感じていただければ」。

展示風景より、松本陽子《振動する風景的画面 Landscape-Like Surface Vibrates》(2017)

編集部

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