あの人のアートコレクションが見たい!:自宅公開日を設け、コレクションを披露するゆとりーマンさん
急増しているアートコレクター。作品が飾られているコレクターの自宅を、自身もコレクターであるコバヤシマヒロが訪問して紹介。作品を愛するそれぞれの人柄が現れるような、千差万別のアートコレクションをお届けします。
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これまで紹介してきたアートコレクターのほとんどが「部屋に飾りたい」「作品にひと目ぼれした」と気持ちが動いたことで、コレクションの道に入った方ばかりでした。しかし、今回ご紹介するサラリーマンコレクター・ゆとりーマンさんは、「コレクションのきっかけは『投資』という側面からでした」と語ります。
ゆとりーマンさんは、埼玉県の新興住宅地に住む20代後半の会社員。コレクションをスタートしてから今年で3年目。現在のコレクションは50点ほどです。
「投資の勉強をしているなかで、欧米では『アート』が投資のひとつの選択肢として確立されていると知って、購入を意識し始めたのがスタートでした。さらに、末永幸歩さんの『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(2020、ダイヤモンド社)という本を読んでアートの魅力に気づいたことが最初のコレクションにつながりました」とゆとりーマンさん。
最初は、投資という言葉が頭をかすめ、名のある金氏徹平さんの作品を購入。それがファーストコレクションとなり、次々と手に入れることになります。
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知人のコレクター向けに、オープンハウス企画
先日、ゆとりーマンさんは、自身が持つ50点ほどの作品を多くの人に見てほしいと「オープンハウス企画」を立てました。「手探りで行っていた蒐集ですが、徐々にパズルのピースを当てはめるような感覚になってきて、今年、ひとつの完成を迎えたような、いわば一枚の絵を仕上げたような感覚になりました。これを節目ととらえて、顔見知りのコレクター向けにオープンハウス型の展覧会を行いました」。
15人ほどのコレクターを3部制で時間を分けて招待。私もお声がけいただき、そのオープンハウス企画に参加しました。入口である1階はリビングスペース。コレクター以外の様々な方を招き入れる可能性があるとのことから、「作品の選択には、妻の許可が必要になっている」とのこと。比較的シンプルで綺麗な作品が多く並んでいる印象です。展示を目的にしているためか、「この場所にはこういう作品が欲しい」という明確なビジョンがあることも私には新鮮でした。
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ゆとりーマンさんにとくにお気に入りの作品を聞くと、返ってきた答えは、黒坂祐さんの《shower(night moment)》でした。「比較的初期にコレクションした作品です。黒坂さんの描く作品はどれも好みなのですが、そのなかでもこの作品は、黒坂さんを象徴するある種セルフポートレートのような位置づけで気に入っています。biscuit galleryでの『コレコレ展Vol.5』や東京オペラシティの『project N 87』でも展示してもらい、作家の歴史だけでなく、コレクターとしての自分の歴史とも重なる特別な作品です」。
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そして、ゆとりーマンさんのコレクションのなかでもっとも多いのが磯村暖さんの作品です。磯村さんの魅力について聞くと、「アートに興味を持つ前にテレビ番組で見たことがあって、そのときから印象に残っていました」。投資としてのアート収集を考える以前から、ゆとりーマンさんは磯村さんに引っかかっていたのかもしれません。
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「磯村さんの作品を所有してわかったのは、1作品に空間を掌握するほどの圧倒なパワーがあること。見た目はシニカルで一般的に受け入れられづらい作品も多いのですが、その背景には誰かを『救おう』とする優しい想いがこもっていることも魅力だと感じています。自身と同世代の作家(1992~93年生まれ)の作品をコレクションのひとつの軸としているのですが、なかでも磯村さんの作品はコレクションの骨格といえるかもしれません」。
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