「生命力」を描き出す
華楊の作品を鑑賞していると、主役である動物たちを静かに支える「植物」の存在感に目を見張る。1章の《葉桜》に見られる瑞々しい描写はもちろん、例えば《耕牛》(1934)の足元でひっそりと、しかし確かな存在感を放つドクダミの花などもその好例だ。主役を引き立てる対比として植物を効果的に配し、画面全体を調和させる構成からは、華楊の自然に対する深い観察と慈しみが感じられる。


3章「探究 植物表現の生命力」では、華楊が描く植物に焦点を当て、その卓越した作家性を改めて浮き彫りにする。静かでありながらも、内側から満ちる確かな生命力を感じられる作品群によって、華楊の表現の深奥に触れられる。あわせて本章で展示されている下絵やスケッチの数々からもそれが見受けられる。

最終章となる4章「大成 『偉大なる動物画家』として」では、まさに画業の集大成とも言える晩年の傑作が一堂に会する。戦後、華楊は日本芸術院会員や日展顧問を歴任し、1981年には文化勲章を受章。翌年のパリ個展では「偉大なる現代の動物画家」と評された。この時期の作品は、これまでの生き生きとした写実描写がさらに深まりを見せ、どこか幻想的な画面づくりへと昇華しているのが特徴だ。

なかでも同館所蔵の《幻化》(1979)は、本展のハイライトのひとつだ。古来、人を化かすと言われる狐を、なんとも気品あふれる姿で描き出している。2匹の狐が夢の世界で追いかけっこをするように遊ぶ姿はファンタジーのようでありながら、長年培った徹底的な「写生」の力が宿るからこそ、圧倒的な説得力をもって鑑賞者に迫ってくる。まさに華楊の到達点を示す作品と言えるだろう。
およそ70年にわたり、京都画壇の最前線で活躍し続けた山口華楊。本展はその歩みを、初期から最晩年まで丁寧にたどっている。たしかな技術に裏付けされた写生の力がもたらす愛らしい動物たちの描写は、迫力に圧倒されるとともに、鑑賞者の心を解きほぐすような柔らかさも宿っている。東京でこれだけ多くの華楊作品に出会えるこの貴重な機会を見逃さないでほしい。


なお、同館のミュージアムショップでは、本展の開催にあわせたオリジナルグッズも多数販売中。図録をはじめ、華楊作品に描かれた愛らしい動物たちをあしらったTシャツやトートバッグなど、日常使いしたくなるアイテムが揃っている。鑑賞の余韻とともに、ぜひこちらも手に取ってみてはいかがだろうか。



















