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ステファニー・クエールが粘土で動物たちをつくり続ける理由

動物をモチーフにリアルな存在感をそなえた彫刻作品を手がけるステファニー・クエール。グレートブリテン島とアイルランドに挟まれたアイリッシュ海に浮かぶマン島に生まれ、現在も同島を拠点に制作を行う彼女の「Animal Instinct」と題する個展が、東京・千駄ヶ谷のGallery 38にて6月25日まで開催されている。来日した彼女に話を聞いた。

文・撮影=中島良平

ステファニー・クエールと《Climp》(2018)

粘土は他者ともっとも通じあえる素材

──マン島に生まれ、幼いころから豊かな自然と触れており、動物こそが私がアートを続ける理由だといった趣旨のことを以前インタビュー記事で拝読しました。まずマン島はどのような島なのか、島の環境について聞かせてください。

 マン島は53km×22kmほど(編集部註:淡路島と同じぐらいの面積)のとても小さな島です。山がひとつといくつもの丘があり、海岸線も入り組んでいて、季節の移ろいもあり天候も変わりやすいので、豊かな風景に恵まれています。大抵の場所から海が見えて、島に住んでいることをいつでも意識させるような環境です。

 私の両親は農場を経営していて、いまも私たち家族はそこで風景から多くの情報を得ながら暮らしています。土と草の地面があり、納屋には干し草が収められていて、あらゆるものが大きくて重く、トラクターや農具などはソリッドで、とても彫刻的なものに囲まれた生活だといえます。羊が生まれる瞬間には生命の奇跡を感じられて、動物たちが暮らす納屋ほどにスピリチュアルでエネルギーが感じられる場所はないかもしれません。

ステファニー・クエール

──マン島の農園で生まれ育ったクエールさんが、動物をモチーフにして表現を始めた時期を教えてください。

 物心がつく前からつくり続けています(笑)。動物以外をモチーフに何かをつくろうとしたことはありますが、原動力となるのは動物です。ほかのモチーフを選んだとしても、なぜ自分が動物にこれだけ惹かれているのかを考えた結果としてそれを選ぶのだと思います。本当に小さな頃から、本能的に動物を選んできました。農場で育ったことも関係しているでしょうし、子供の頃から動物と触れ合えて、とても恵まれていたと思っています。

──粘土と出会ったのはいつ頃でしょうか?

 すごく幼い頃から、農場の土をこねて干し草や枝を組み合わせて鳥の巣をつくったりはしていたので、粘土の原体験のようなものはそこにあります。それからドローイングやペインティングで動物を描くようになり、マン島のカレッジで基礎コースに進学すると、あらゆる素材や技法を試しながら表現を探究するプログラムで、彫刻へと自分の意識が向かっていきました。木に触れることから始まり、いろいろ試すなかで粘土と出会ったのですが、自分の感情がそこに込められ、生まれるかたちを通して鑑賞してくれる他者ともっとも通じあえる素材が粘土だと感じました。粘土は瞬間を刻み込むのに最も適した素材で、押したり、叩いたり、伸ばしたり、パンチしたり、つくり手のあらゆる行為を受け止めて記録してくれます。それが窯に入ると、土と水でできあがったものが熱によって石のように固まる。私の瞬間ごとの行為が固まって定着するような、それは信じられないような工程です。

──窯から出てくると水分が抜けて、作品の表情も変わりますよね。

 窯を開けるのは本当に素晴らしい瞬間です。1200度の熱で焼かれて粘土の色はまったく変わり、粘土の状態から重力に耐える姿へと生まれ変わっているのです。もちろんヒビが入ることも、折れてしまうことも、破裂してしまうことだってあります。粘土をどのように扱うか、どうやって空洞化するかも含めて時間をかけて学ぶことは重要でした。

展示風景より

崇拝されてきた動物たち

──今回の個展「Animal Instinct」について伺います。モチーフの動物はどのように選んだのでしょうか?

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