バロ・デヴェルが問いかける共生の地平。「SHIZUOKAせかい演劇祭 2026」で注目作『Qui som?』が日本初演へ【2/2ページ】

陶芸と身体、12名のアーティストが描く「これからやってくる世界」

 2000年の結成以来、サーカスを出発点に笑いと緊張、危うさと美しさが共存するスケールの大きな舞台を提示してきた、カミーユ・ドゥクルティとブライ・マテウ・トリアスによるカンパニー、バロ・デヴェル。今回日本初演される『Qui som?』は、彼らが取り組む「陶芸」をテーマにした3部作の第1作であり、2024年のアヴィニョン演劇祭で初演され、世界的に熱い注目を浴びている話題作だ。

カミーユ・ドゥクルティとブライ・マテウ・トリアス ©François Passerini

 舞台上では、粘土や陶器といった物質が次々と形を変え、重力を超越したかのようなアクロバティックな身体表現と交差する。年齢もバックグラウンドも異なる12名のアーティストたちは、言語や人種、国境という既存の枠組みを軽やかに飛び越え、身体そのもので「共に生きること」を問いかける。

 タイトルの「Qui som?(わたしたちは誰か?)」という根源的な問いは、ドゥクルティとトリアスの演出によって、ユーモアと詩情に満ちた祝祭へと昇華される。混沌とした現代社会において、他者と共にあるための「小さな勇気」を分かち合う、稀有な鑑賞体験となるだろう。

 6日の終演後のアーティストトークには、振付家・ダンサーの近藤良平氏が登壇し、カンパニーアーティストと創作について語り合う。

バロ・デヴェル『Qui som?─わたしたちは誰?』 © Christophe Raynaud de Lage
バロ・デヴェル『Qui som?─わたしたちは誰?』 © Christophe Raynaud de Lage

祝祭の場としての静岡。多層的なプログラムが交差する

 今年の演劇祭では、石神夏希演出の新作『うなぎの回遊 Eel Migration』や、宮城聰演出の代表作『王女メデイア』の16年ぶりとなる静岡上演など、SPAC作品も充実している。また、市街地を舞台にしたストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡2026」も同時開催され、静岡の街全体が劇場へと変貌を遂げる。

「劇場という場所は、都市に似ていてほしい」と語る石神。その新体制下で、演劇祭はたんなる作品上演の場を超え、異なる「せかい」を持つ人々が互いを想像し合うための、開かれた対話の場となることを目指す。

編集部