新型コロナウイルスが美術館に与えた影響がますます深刻化している。12月2日に再開したテートが、約120人のスタッフを解雇することを発表した。
テート4館(テート・モダン、テート・ブリテン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴス)は、今年約6ヶ月間閉鎖されており、開館時の来場者数は通常の20パーセントのみ。その結果、今年度の来場者数は800万人の予想に対し、100万人にとどまると推定。収益も5600万ポンド減少すると予想されている。
この危機を乗り切るため、テートは12パーセントのスタッフ解雇を決定。これにより、約480万ポンドの資金を賄うことができるという。現段階では、全部門における自発的な退職や早期退職、労働時間の短縮、または休職などのスキームが推進されているが、目標が達成できなかった場合、21年には強制的な解雇に移行する可能性もある。
今回の決定について、同館ディレクターのマリア・バルショーと最高執行責任者のヴィッキー・チーサムは共同声明文で次のように述べている。「従業員の規模を縮小することは、私たちが非常に不本意ながら行う行動だ。テート同僚の知識、経験、情熱は、私たちの成功の中心にあり、非常に高く評価されている。とはいえ、パンデミックが財政に与える影響を考えると、選択の余地はない。私たちは、同僚や労働組合と協力し、同僚、来場者、アーティスト、そして将来の世代のために、テートの長期的な未来を確保するために全力を尽くすことを決意する」。
小売やケータリング、出版サービスを運営しているテートの商業部門、テート・エンタープライズでは、今年すでに217人のスタッフを解雇。バルショーとチーサムによると、テートは運営予算や役員報酬の削減、オンライン販売の拡大などの手段をつくしたが、これらの措置だけでは、同館が直面している長期的な財政難を克服できないという。
イギリスの労働組合「Prospect」のナショナル・セクレタリーであるアラン・レイトンは、テートが従業員の削減を完全に自主的に行うことを歓迎しながら、強制的な解雇の回避を求めている。「しかし、自主的な退職は解雇であることに変わりはない。遺産部門や観光経済全体で働くすべての人が、当分のあいだ、自分たちの仕事に大きな不安を抱くことになるだろう。外部からの十分な収入を得る方法がなく、国の素晴らしい文化遺産を維持するために、政府はこの部門への更なる的を絞った支援が切実に必要であることを認識しなければならない」。