新型コロナウイルスが美術館・博物館セクターに与える影響を明らかにするため、ICOM(国際博物館会議)が第2回の調査報告書を発表した。
ICOMが今年5月に発表した初回の報告書では、新型コロナウイルス感染拡大の最中に約95パーセントの施設が閉鎖を余儀なくされ、それによる深刻な経済的・社会的・文化的影響を示した。今回の報告書では、5大陸の美術館・博物館の管理層や職員、短期労働者などから約900件の回答を集めており、新型コロナウイルスによる美術館・博物館の危機の現状を分析している。
前回と比べると、9~10月の美術館の開館状況は、ヨーロッパやアジアではほとんどの美術館が開館し、中南米やカリブ海地域では大半が閉館し、その他の地域では状況が混在するなど、地域によって大きく変動していた。こうしたなか、80パーセント近くの美術館職員は現場での仕事を再開。しかし、中南米やカリブ海諸国、北アメリカ、太平洋地域では、在宅勤務がまだ広く奨励もしくは強制されており、この調査後には欧米でも第2波による休館などが相次ぐなど、状況は流動的だ。
雇用に関して、約14パーセントの美術館は、一部のスタッフを一時解雇もしくは解雇。さらに16.2パーセントの美術館は、今年2月〜9月のあいだに少なくともスタッフの4分の1を解雇または一時解雇したと回答している。
フリーランスのスタッフの状況は前回より改善しているが、依然として憂慮すべき状態にある。回答者の11パーセント近くは一時的に解雇され、16パーセントは契約を更新されていない。また、28.9パーセントの回答者は失業の恐れがあると答えており、27.5パーセントはキャリアの全面的な変更を検討しているという。
新型コロナウイルスは、美術館の展覧会プログラムにも不確実性をもたらしている。回答者の60パーセント以上が、自館の展覧会とパブリックプログラムの縮小を懸念。これらの数字は、4月の82.6パーセントを下回っているものの、まだ不安が残っていることを示している。また、自館が再開できないと考える回答者の割合は、4月の13パーセント近くから約6パーセントに減少しているいっぽう、半分以上の回答者は開館時間の短縮を図るとしている。これもまたコロナ第2波以前の話であり、状況はふたたび注視すべきものとなっている。
コロナ禍での大きな変化として挙げられるのが、美術館のデジタルプログラムの強化だ。オンライン展覧会やライブストリーミング・イベント、ラーニング・プログラム、ニュースレター、SNSなどのカテゴリーにおいては、平均31.7パーセントの美術館がロックダウンのなかでデジタルプログラムを開始もしくは増加したことが示された。
ICOMは声明文で、コロナ禍における美術館・博物館の重要性を次のように強調している。「コロナ禍後の経済回復と社会回復のプロセスは、長く複雑なものになるであろう。美術館・博物館は、地域の発展における重要な主役であり、人々が出会い、学ぶための比類のない場所として、地域経済の再建と被災したコミュニティの社会構造の修復に重要な役割を果たすことになるだろう」。