見ること、感じることの境界を探る
「REFLUX たちのぼる兆し」には、Ideal Copy、磯村暖、evala、津田道子、手塚治虫(1928〜1989)、山内祥太、Ryu Ikaの7組が参加。映像や音、インスタレーションを通じて、普段は意識されることの少ない身体の感覚や、社会のなかに潜む変化の気配を浮かび上がらせる。

会場入口で展示されているのは、磯村暖によるシャボン玉を用いた《Informe-action Center #749》(2026)だ。シャボン玉は、かたちをとどめることなく漂い、やがて消えていく。磯村の作品は、この儚い存在を通じて、目に見えない風や空気の動きを鑑賞者に意識させるものとなっている。作品の説明を読むよりも先に、シャボン玉そのものを感じてほしいという意図があるという。

シャボン玉を目にしたとき、私たちは空気の流れを感じるだけでなく、幼い頃の記憶が呼び起こされることもある。展覧会の最後にも磯村による作品《Informe-action Breath and Wind #506》(2025)を配置したのは、こうした感覚や記憶への働きかけを、鑑賞体験の入口と出口に据えるためだという。

いっぽう、山内祥太が出品するのは、地下茎の構造から着想を得たインスタレーション《In Between...Us?》(2026)だ。木の根や神経を思わせる白い構造体が広がり、周囲の音や声に反応して光を発する。
本作の背景にあるのは、現代思想においてドゥルーズ/ガタリが提唱した「リゾーム」という概念だ。植物の地下茎のように、中心や階層を持たず、複数の方向へと広がりながら接続する関係性を指す。作品にはパフォーマーが入り込み、その動きや音に応じて構造体が変化する仕組みも組み込まれている。鑑賞者や周囲の環境との関わりによって、作品のあり方がその都度変わっていく。

津田道子は、複数のフレームを組み合わせたインスタレーション《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》(2016/2026)を展開。枠、映像を映し出すスクリーン、鏡という異なる性質のフレームが設置され、鑑賞者はそこに映り込む自分自身や他者の姿に向き合うことになる。
あるフレームの向こうに見えるのは現実の空間だが、別のフレームには映像や鏡像が現れる。自分が他者を見る視線と、他者から見られる自分の姿が交錯することで、鑑賞者の位置や視点は揺さぶられていく。フレームは展示空間の複数の場所にも設置されており、鑑賞者は移動しながら、様々な視点を経験することになる。津田はこの作品を通して、思いがけない自分自身の姿を知ることを楽しんでほしいと述べた。



















