今週末に見たい展覧会ベスト10。三の丸尚蔵館の名品から「神奈川沖浪裏の誕生と軌跡」、金沢21世紀美術館の再開まで

今週末までに開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」展の展示風景より、葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(1831頃)

開館記念展の総集編。「皇室のみやび─受け継ぐ美─」(皇居三の丸尚蔵館)

展示風景より

 昨年11月に開館30周年を迎え、リニュアルオープンした皇居三の丸尚蔵館。同館で4期に分けて開催されている開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」の第4期「三の丸尚蔵館の名品」が、6月23日に閉幕する。レポート記事はこちら

 本展は、「皇室のみやび」をテーマに、同館の収蔵品から国宝を含む様々な作品を紹介するもの。同シリーズを締めくくる第4期では、国宝・伊藤若冲《動植綵絵》4幅や、国宝・高階隆兼《春日権現験記絵》1巻など、皇室にもたらされた数々の名作が展示。また、令和3年に国宝指定された狩野永徳《唐獅子図屏風》も、リニュアルオープン後の同館で初めて公開されている。

 国宝のほか、本展では「今後さらに高い評価を得るであろう」という作品も本展の見どころ。今年新たに重要文化財に指定された作品や1900年のパリ万国博覧会の出品作など、ぜひ会場にて堪能してほしい。

会期:2024年5月21日〜6月23日
会場:皇居三の丸尚蔵館
住所:東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下、18歳未満、70歳以上は無料

日本のアール・ブリュットのつくり手に注目。「つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人─たとえば、『も』を何百回と書く。」(滋賀県立美術館)

展示風景、齋藤裕一《ドラえもん》(2003〜06)

 滋賀・大津の滋賀県立美術館で、開館40周年を記念した企画展「つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人─たとえば、『も』を何百回と書く。」も6月23日まで開催されている。レポート記事はこちら

 日本国内において関心が高まっているアール・ブリュット(日本語で「生(なま)の芸術」の意)。いっぽうで、福祉的な背景を持つつくり手が多いアール・ブリュットは、異能による「障害者アート」だという誤解を受けがちだ。本展は、そのような線引きを取り払いながら、つくり手たちによる創作欲求みなぎる作品にフォーカスするもの。昨年に日本財団より日本のアール・ブリュットのつくり手45人による作品が寄贈されたことをきっかけとして企画された本展では、約450点の作品が全5章構成で展示されている。

 また会場外でも、本展の展示作品から着想を得たというワークショップエリアや、展示室内で「も」さんを探すといった別角度から展示を楽しむ仕掛けも用意。そちらにも触れあいながら、ゆったりとした時間を過ごしてみるのがいかがだろうか。

会期:2024年4月20日~6月23日
会場:滋賀県立美術館 展示室3
住所:滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
開館時間:9:30~17:00 ※入場は16:30まで
料金:一般 900円 / 高校生・大学生 600円 / 小学生・中学生 400円 / 未就学児無料

工芸作品における光と影の関係を探る。「おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展」(国立工芸館)

展示風景より

 工芸作品における光と影の関係に注目する展覧会「おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展」が、石川・金沢の国立工芸館で始まっている。レポート記事はこちら

 担当学芸員・今井陽子(国立工芸館 主任研究員)は、本展の意図について次のように述べている。「光と影の在り方は、我々の気持ちや環境でも意味あいが変わってくるものである。そのような現象から工芸の鑑賞を楽しんでみてほしい」。

 会場では、そのような見方を促すために、3つの展示室ごとにテーマを設けている。ライティングにより浮かびあがる、作品の表層や構造における光と影の様子に着目する展示室1「光?影?/光と影でモノがたる」、様々な作品ごとに見られる光と影のニュアンスに、さらに一歩踏み込むものとなる展示室2 「光と影でカタチつくる」、そして素材を限定し、「メタル&ガラス」に注目する展示室3。夏休みの自由研究の一環に、親子で訪れるのもおすすめだ。

会期:2024年6月18日~8月18日
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし、7月15日、8月12日は開館)、7月16日
料金:一般 300円 / 大学生 150円 / 高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と付添者1名 無料

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》はいかに誕生したか。「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」(すみだ北斎美術館)

展示風景より、葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(1831頃) 吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託

 1000円札の新紙幣に葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の図柄が採用されたことを記念して、同作誕生の背景や図柄利用の軌跡をたどる展覧会「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」が、東京・両国のすみだ北斎美術館で開催されている。レポート記事はこちら

 本展は3章構成で、《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の誕生の背景から影響関係、その後のプロダクト利用までをたどる。プロローグでは、本展開催のきっかけとなったまだ流通量も少なく見慣れない新1000円札のモックアップを紹介するとともに、《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の実作を紹介している。

 また本館が所蔵する《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(前期展示〜7月21日)も展示。非常に状態が良く、空の色や雲のかたちもはっきり確認できる貴重な作品だ。誰もが知る《神奈川沖浪裏》という傑作ひとつを、様々な作品や資料から深堀りする珍しい視点の展覧会をぜひチェックしてほしい。

会期:2024年6月18日〜8月25日
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
電話番号:03-6658-8936
開館時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月15日、8月12日は開館)、7月16日、8月13日
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円

写真家・今森光彦の活動を深堀りする。「今森光彦 にっぽんの里山」(東京都写真美術館)

展示風景より

 写真家・今森光彦の個展「今森光彦 にっぽんの里山」が東京都写真美術館で行われている。レポート記事はこちら

 今森は1954年滋賀県生まれ。大学卒業後独学で写真技術を学び学び、80年よりフリーランスに転身。以後、琵琶湖をとりまく自然と人との関わりをテーマに撮影するいっぽう、熱帯雨林から砂漠まで世界各地で撮影を続けてきた。近年は、環境農家、ガーデナー、里山環境プロデューサーとしても活動している。

 本展では「春」「夏」「秋」「冬」と四季ごとのセクションに分けて今森の作品が展示されている。現在、今森は滋賀県の琵琶湖周辺に住み、みずからも「里山」づくりに携わりながら、継続的に作品制作に取り組んでいる。今森はこれをひとつの場所を深堀りする「縦の軸」と呼び、日本各地に赴いて里山の姿を撮影する活動を「横の軸」と呼んでいる。各章では、こうした今森の「縦の軸」と「横の軸」を交えながら、00年代前半から近年にいたるまでの作品を見ることができる。

会期:2024年6月20日~9月29日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3
電話番号:03-3280-0099 
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月(祝休日の場合は開館、翌平日休館) 
料金:一般 700円 / 学生 560円 / 高校・中学生 350円 

美術品の保存修復に脚光を浴びる。「てあて・まもり・のこす 神奈川県立近代美術館の保存修復」(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)

展示風景より、福沢一郎《よき料理人》(1930)の裏側。外側の木枠は1992年に修復用として新調されたもの

 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で、企画展「てあて・まもり・のこす 神奈川県立近代美術館の保存修復」がスタートした。レポート記事はこちら

 本展は、美術館の活動を継続してこられた理由のひとつに保存修復があるという視点から企画されたもの。鎌倉別館が開館した2003年以前は、保存修復を担当する職員は在籍しておらず、外部の修復技術者へ依頼することが通常であったが、現在は2名の保存修復担当(おもな専門は油彩画・西洋絵画)が同館に在籍しており、館内で修復できる事例が増えたという。

 会場では、そういった保存修復の視点における3つのキーワード「てあて」「まもり」「のこす」をもとにコレクション作品が展示。様々な要因により損傷を受けていたコレクション作品の修復事例や、良好な状態を保ち続ける活動、同館の保存修復活動のアーカイヴ映像などが紹介されている。作品の保存修復がいかに重要な仕事なのかを再認識させられるものだ。

会期:2024年5月18日〜7月28日
会場:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2-8-1
電話番号:0467-22-5000
開館時間:9:30~17:00 ※入場は16:30まで
休館日:月(ただし7月15日は開館)
料金:一般 700円 / 20歳未満・学生 550円 / 65歳以上 350円 / 高校生 100円

金沢21世紀美術館が震災後に初めて再開。「Lines(ラインズ)─意識を流れに合わせる」(金沢21世紀美術館)

マーク・マンダース 4つの黄色い縦のコンポジション 2017-2019
金沢21世紀美術館蔵
©Mark MANDERS photo: KIOKU Keizo

 今年元旦に発生した能登半島地震によって展示室の天井のガラス板天井が落下する被害を受けた金沢21世紀美術館が、震災後初めて展示室を再オープン。展覧会「Lines(ラインズ)─意識を流れに合わせる」を6月22日にスタートさせる。

 本展は、英国の人類学者のティム・インゴルドの著作のなかでも、初めての邦訳となる『ラインズ 線の文化史』(左右社、2014)からインスピレーションを得て構想されたもの。世の中に存在するすべてのものを「線」という視点から考察し、線が私たちの生活や人間関係をどのように形づくっているかを、作品を通じて考えるという。

 展覧会では、コレクション作品から様々な「Lines/線」を見出すことのできる作品をピックアップして展示するほか、日本、ベトナム、オーストラリア、ガーナ、フランス、オランダ、デンマーク、チェコ共和国、アメリカ、ブラジルの10ヶ国から多種多様な文化的背景を持つ16作家(グループを含む)による35作品も紹介される。

会期:2024年6月22日~10月14日
会場:金沢21世紀美術館
住所:金沢市広坂1-2-1
電話番号:076-220-2800 
開館時間:10:00~18:00(金土〜20:00) ※観覧券販売は閉場の30分前まで
休館日:月(ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は開場)、 7月16日、8月13日、9月17日、9月24日 
料金:一般 1200円 / 大学生 800円 / 小中高生 400円 / 65歳以上 1000円

ロートレックの真の姿に迫る。「フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線」(SOMPO美術館)

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック キャバレのアリスティド・ブリュアン(文字のせ前) 1893 127.3×95.0㎝ リトグラフ
The Firos Collection

 19世紀末のフランスを代表する画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864〜1901)。フィロス・コレクションからその作品を紹介する展覧会「フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線」が東京・新宿のSOMPO美術館で開催される。

 フィロス・コレクションとは、ギリシャ人コレクターのベリンダとポール・フィロス夫妻が20年以上にわたり収集しているロートレックの紙作品(グラフィック)の個人コレクション。本展では、個人コレクションとして世界最大級であり日本初上陸となるこのコレクションから、約240点の作品と関連資料が展示される。

 会場は全5章で構成され、19世紀末パリの様相を伝えるポスター群から、それにまつわる日々のスケッチや、同コレクションの強みでもある約45点の素描、そして書簡、写真なども紹介。画家の関連資料からロートレックの真の姿に迫る機会となる。

会期:2024年6月22日~9月23日 ※日時指定推奨
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00)※最終入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生以下無料

丸の内における初の刀剣展。「超・日本刀入門 revive―鎌倉時代の名刀に学ぶ」(静嘉堂文庫美術館)

ポスター

 東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館で、「超・日本刀入門 revive―鎌倉時代の名刀に学ぶ」展が6月22日から開催される。

 丸の内で初の刀剣展となる本展では、館蔵の国宝・重要文化財刀剣9件をはじめとして、「日本刀の黄金時代」と称される鎌倉時代を中心に、平安~南北朝の古名刀を特集。さらに特別公開として鎌倉時代の仏像の名品、重要文化財「木造十二神将立像」7軀も一堂に会する。

 刀剣ブームがすでに定着したいま、「全部同じに見える」「どこを見ればいいのか分からない」という方に向けた入門編の展覧会と言える。

会期:2024年6月22日~8月25日
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
住所:東京都千代田区丸の内2-1−1 明治生命館1F
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(土は〜18:00、第3水は〜20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日
料金:一般 1500円 / 大高生 1000円 / 障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む)700円 / 中学生以下 無料

情報時代における様々なリアリティを改めて考える。「ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ」(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC])

ウィニー・スーン 「Unerasable Characters」シリーズ 2020〜22 「Hello, Human!」展(台北当代芸術館、2024)展示風景

 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]で「ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ」が6月22日にスタートする。

 情報はいつでも享受できるいっぽうで、提供される情報のみで世界が構築されることにもつながった。本展は、この時代の情報環境における、様々なリアリティの「遠さ」と「近さ」(とその変化)について、これからの集合的無意識を構成する要素について、私たちの日常の変化を反映した作品、日常がどのように変わるのかをとらえようとした作品など、それぞれが異なるアプローチによる作品から考えてみるものだ。

 出展作家は、青柳菜摘、細井美裕、木藤遼太、ウィニー・スーン、たかくらかずき、ユーゴ・ドゥヴェルシェール、葉山嶺、古澤龍、米澤柊、リー・イーファン、おおしまたくろう、リー・ムユン、グレゴリー・バーサミアン、岩井俊雄、リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC。

会期:2024年6月22日~11月10日
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー 4階
電話番号:0120-144199
開館時間:11:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、祝休日の場合は翌日)、保守点検日(8月4日)
料金:一般 500円 / 大学生 400円 / 高校生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と付添1名 無料

編集部

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