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新千円札の葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》は何がすごいのか。すみだ北斎美術館学芸員に聞く

新千円札の図案に採用された葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》の誕⽣と受容を深堀りする展覧会「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」が東京・両国のすみだ北斎美術館で開催中。なぜ、同作は人々の印象に残り、インパクトを与え続けているのか。同館学芸員の奥田敦子に寄稿してもらった。

文=奥田敦子(すみだ北斎美術館学芸員)

葛飾北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏 すみだ北斎美術館 *半期で同タイトルの作品と展示替え

 東京・両国のすみだ北斎美術館で開催中の「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」で深堀りされている、新千円紙幣に採用された葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》( 以下、《浪裏》)。本作は浮世絵師の葛飾北斎が70代で発表した「冨嶽三十六景」シリーズの一図です。

葛飾北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏 すみだ北斎美術館 *半期で同タイトルの作品と展示替え

 《浪裏》の特徴的な美しい藍色は、古来用いられてきた植物由来の本藍だけではなく、18世紀初頭にベルリンで開発された合成化学顔料プルシアンブルーを使っています。プルシアンブルーは18世紀中頃に日本へ輸入され、ベロリン藍、ベロ、ヘロなどと呼ばれました。浮世絵に取り入れられたのは文政(1818-30)末頃のことです。鮮やかな発色で粒子が細かく水にも溶けやすいため、空や海、川を美しく表現するぼかし摺りにも活かされました。《浪裏》では印象的な波の色に用いられています。

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