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2024.6.18

「おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展」(国立工芸館)開幕レポート

石川・金沢の国立工芸館で、「おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展」がスタートした。会期は8月18日まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より
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 石川・金沢の国立工芸館で、「おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展」がスタートした。会期は8月18日まで。担当学芸員は今井陽子(国立工芸館 主任研究員)。

 本展は工芸作品における光と影の関係に注目するものだ。「光と影の在り方は、我々の気持ちや環境でも意味あいが変わってくるものである。そのような現象から工芸の鑑賞を楽しんでみてほしい」と、今井は展覧会の意図を述べた。

 会場では、そのような見方を促すために、3つの展示室ごとにテーマを設けている。展示室1「光?影?/光と影でモノがたる」では、ライティングにより浮かびあがる、作品の表層や構造における光と影の様子に着目するものとなっている。例えば、小川雄平による《陶製黒豹置物》(1933)は真っ黒な作品であるが、光を当てることでその凹凸度合いや滑らかさが浮かび上がってくる。そして、作品を様々な角度から見ることで、そのかたちの美しさや作家の技にも改めて気がつくことができるだろう。

展示風景より、小川雄平《陶製黒豹置物》(1933)
展示風景より、黒田辰秋《白檀塗四稜茶器》(1975)

 また、光と影という意味あいをまた別の角度からとらえることで、四谷シモンによる《機械仕掛けの少女2》も展示されている。なお、同館のYoutubeチャンネルには四谷のインタビュー動画も掲載中だ。

展示風景より、四谷シモン《機械仕掛けの少女2》(2016)

 展示室2 「光と影でカタチつくる」では、様々な作品ごとに見られる光と影のニュアンスに、さらに一歩踏み込むものとなる。槌で打たれてつくられた関谷四郎の《赤銅銀十字線花器》(1975)は、その微細な打ち跡がよりエッジを際立たせている。また、染めや織りに見られる滑らかなグラデーションの表現にも、心奪われるような美しさが見受けられる。

展示風景より
展示風景より、関谷四郎《赤銅銀十字線花器》(1975)
展示風景より、福本潮子《時空3》(1993)。美しい染めのグラデーションと、繊維の隙間から見える奥行きに見える揺らぎ(モアレ)にも注目
展示風景より、志村ふくみ《紬織着物 水瑠璃》(1976)

 展示室3では素材を限定し、「メタル&ガラス」に注目。金属とガラスに見られる光の吸収と透過、反射や散乱、それによる影に目を向けるものとなっている。なかには重要文化財でもある鈴木長吉の《十二の鷹》(前後期あわせて6羽が出展)も展示されており、鈴木が実際に鷹と生活し、金属のなかでリアリティを追求したことがうかがえる。

展示風景より、鈴木長吉《十二の鷹》
展示風景より、手前は高橋禎彦《花のような》(2004)

 展示室2と3のあいだにはイサム・ノグチの「AKARI」や剣持勇、アルヴァ・アアルトのチェア、そして黒田辰秋の《欅拭漆彫花文長椅子》(1949)を体験できる休息スペースが設けられている。「実際に体験する」ということがその意匠設計の理解につながるため、休憩がてら色々と観察してみるのも良いだろう。

展示風景より
展示風景より、黒田辰秋《欅拭漆彫花文長椅子》(1949)。拭き漆の技法により、木目の美しさや彫り部分の奥行きが生み出されている

 また、本展のもうひとつの特徴は、タイトルにもあるように「おとなとこどもの自由研究」にある。館内には大人と子供がそれぞれの鑑賞を楽しみ、深めるためのプログラムも提案されている。夏休みの自由研究の一環に、親子で訪れるのもおすすめだ。

「みんなでつくる工芸図鑑」(中学生以下)。発見したことをワークシートに描き、工芸館内でシェアすることができる。鑑賞記念のミニギフトも(先着1000名)