新型コロナウイルスの影響で、世界各地の芸術祭が中止や延期となるなか、「三密」を避けるかたちで新たな芸術祭が開催される。
「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」と題されたこの芸術祭の舞台は、奈良県の吉野町、天川村、曽爾村の3ヶ所。この地域を3〜5時間ほどかけて歩き、自然に包まれながら作品を鑑賞・体験するものになるという。会期は2020年10月3日〜11月15日。
プロデューサーを務めるのは、ライゾマティクス・アーキテクチャー代表の齋藤精一。齋藤は、この芸術祭の肝でもある「歩く」ということについて、次にように背景を語っている。
「コロナ禍では自分の足で歩いたことで、家の周りや自分の身体や周辺空間の解像度が上がったことに気がついた人も多かったと思います。同時に、Stay Home期間中、人は結果として土に触れ、自然を見ることで理由の無い落ち着きを取り戻し『人間とは?』『自然とは?』『環境とは?』『いのちとは?』など答えなき哲学的な問いを考える機会にもなりました。奈良・奥大和の広大な大地を使い、今この時期だからこそ自分の足で歩き、アートを通して身体と自然を感じて欲しい、そのような思いから、歩く芸術祭を広大な奥大和で開催することにいたしました」。
現在公表されている参加アーティストは、井口皓太、上野千蔵、oblaat、菊池宏子+林敬庸、木村充伯、毛原大樹、齋藤精一、坂本和之、佐野文彦、力石咲、中﨑透、西岡潔、ニシジマ・アツシ、細井美裕。
齋藤は「こんな未曾有な状況であるからこそ、自分がいる場所=心の中に美術館をつくることができるのではないか。アーティストたちがこの未曾有の自粛期間に貯めたエネルギーを、奥大和の自然や大地と共に展示できないだろうか。そんな思いとともにこの芸術祭を始動していきます」と意欲を語っている。
なおこの芸術祭では鑑賞に時間を要するため、複数泊が必要。その結果として、関係人口(観光以上移住未満の地域に多様に関わる人々)を生み出すことも目的としているという。