10のメインプログラムを京都市内14会場で
新型コロナウイルスの影響で、今年春の開催を延期した「KYOTOGRAPHIE 2020」が、会期を新たに9月19日から10月18日まで開催される。
KYOTOGRAPHIEは、日本でも数少ない国際的な写真祭として2013年にスタート。今年で8回目を迎える。当初は4月から5月にかけて開催予定だったが、新型コロナの感染拡大によって開催を延期してきた。
目に見えるものだけでなく、想像して見るものも意味する「VISION」をテーマに掲げる今回。当初発表されていたプログラム内容を変更し、10のメインプログラムを京都市内14会場で展開する。
嶋臺(しまだい)ギャラリーでは、片山真理の個展「home again」を開催。片山が自身の足をモチーフに制作した最新シリーズ《in the water》を中心に、過去の代表作も交えて展示する。片山にとっては2017年以来となる個展だ。
映画監督ウォン・カーウァイの元専属フォトグラファー兼グラフィックデザイナーとして名を馳せるウィン・シャは、誉田屋源兵衛 竹院の間を会場に「一光諸影」を開催。遠藤克彦建築研究所がデザインした会場で、映画のスチール作品ほか、自身の作品やファッション写真などを並べる。
1904(明治37)年に竣工した重要文化財・京都府庁旧本館では、ふたりの海外アーティストが作品を見せる。
今年、シャネル・ネクサス・ホールで個展「In Situ」を行った、パリを拠点に活躍する写真家ピエール=エリィ・ド・ピブラックは、この展覧会を京都府庁旧本館で展開。シャネル・ネクサス・ホールとはまったく異なる空間でどのように作品を見せるのか、注目が集まる。
同じく京都府庁旧本館の旧議場では、セネガル出身のオマー・ヴィクター・ディオプが「Diaspora」シリーズを日本初公開する。このシリーズは、欧米で活躍したアフリカ出身の歴史上の偉人と、欧州リーグでプレーするアフリカ出身のサッカー選手、そして当時欧州で活動していた自らを重ねたセルフポートレートだ。
なおディオプはこのほか、鴨川デルタからほど近い「出町桝形商店街」で働く店主たちをポートレートに収めたコラージュ作品を、同商店街のアーケードで展示する。
フランスの写真家マリー・リエスは、フランス国立盲学校の生徒を被写体としたポートレート作品を制作。会場となる「アトリエみつしま Sawa-Tadori」では、写真作品やドキュメンタリー映画に加え、日仏の盲目者コミュニティと共同で制作した「さわる」写真も展示。来場者がそれぞれの感覚で作品を体感する空間を生み出す。
京都の市井の風景を50年以上取り続け、70年代には屋外でその写真作品を自主展示する「青空写真展」を開催していた甲斐扶佐義。本展では、鴨川デルタ付近の屋外3ヶ所で、鴨川付近に暮らす人々や鴨川を訪れる人々を撮影した作品や、異次元の入り口へ誘うような子供たちの遊びをとらえた作品ほか、数シリーズを展示。また京都駅の駅ビル空中径路では、女性のポートレート100点を一堂に紹介する。
KYOTOGRAPHIEと毎年コラボレーションしている1729年創業のシャンパーニュメゾン ルイナール。今年は、世界最大の写真フェア「PARIS PHOTO」が新進作家に贈る「Curiosa sector」の受賞作家のなかから、「メゾン ルイナールアワード2019」を授与されたエルサ・レイダーの作品を見せる。レイヨグラフ(カメラを使用せずに、印画紙の上に物体を置き光を焼き付ける手法)と実験的な手法を織り交ぜた12点の作品に注目だ。
KYOTOGRAPHIE初の常設スペースも
KYOTOGRAPHIE 2020にあわせ、新たな施設も誕生する。それが「DELTA / KYOTOGRAPHIE Permanent Space」だ。DELTAは、高野川と賀茂川が交わって鴨川となる三角州「鴨川デルタ」から命名されたもので、会場のひとつでもある出町桝形商店街に位置する。
ここはギャラリー、カフェ、ホテルなどを併設予定のプロジェクトスペースで、写真祭の時期だけでなく、永続的に活動する場所として様々なプロジェクトが展開されていくという。