目指すのは「1000年続く建築祭」
──今年で5回目を迎えますが、京都モダン建築祭を将来的にどのような存在にしていきたいと考えていますか?
笠原 ひと言で言えば、とにかく長く続けたいということです。何か特定の目標を達成したら終わりというイベントではなく、建築があるかぎり続けていきたい。極端に言えば、人類が滅びるまで続けるくらいの気持ちです(笑)。
京都には1000年以上続く「祇園祭」がありますよね。街の人たちが参加して、自分たちで守り、続けてきたお祭りです。初年度から、私たちもそういう存在になりたいと思っていました。「1000年続くお祭り」にしたいんです。ただ、それは簡単なことではありません。
──長く続けていくうえで、最大の課題はなんでしょうか?
笠原 ひとつは、財政的に安定した仕組みをつくることです。じつは、初年度は数百万円規模の大赤字だったんです。それが徐々に改善されて、3年目に初めて黒字になりました。ただ、それも数十万円程度のわずかな黒字です。昨年もなんとか黒字にはなりましたが、まだ安定しているとは言えません。
例えば、これまで比較的天候に恵まれてきましたが、会期中に台風が来て、ずっと雨が降れば来場者は大幅に減るでしょう。そうなると収入も減ってしまう。
それから、文化庁などの助成金もいただいていますが、助成金は永遠に受け取れるものではありません。長く続けるためには、どこかで自立できる仕組みをつくらなければいけない。パスポートの収入だけでは難しいので、企業などからの支援も必要になります。ただ、京都は東京や大阪と比べて大企業の本社が少なく、スポンサーを獲得することも簡単ではありません。いまのところ、安定的に継続できる仕組みが完成したとは言えないんです。もうひとつは、魅力的なプログラムを提供し続けることですね。

建築というのは、一度見たら満足する人もいます。仮に10件の建築しか公開しなかったら、1年で全部見終わってしまうかもしれない。それではリピーターを増やせません。だから公開する建築の数を増やすと同時に、たんに建物を見るだけではない、様々な切り口の企画を考える必要があります。今年も東山エリアで「東山大茶会」という新しい企画を行うなど、工夫を重ねています。
財政的な安定と、魅力的なプログラムの継続。この両輪がないと、本当の意味で長く続けることはできません。
──建築祭そのものが長く続くことが、建築を守るためにも重要だということですね。
笠原 そうです。建築があるかぎり、続けていく必要があると思っています。それから、建築祭には新しいネットワークを生み出す可能性もあると考えています。例えば、同じ建築家が設計した建物の所有者同士がつながるということがあります。ヴォーリズや村野藤吾の建築を所有したり管理したりしている人たちや、安藤忠雄さんが設計した住宅に住んでいる人たちのネットワークですね。これは、従来の地域単位でのつながりとは違い、場所を超えた新しい関係です。
そうした所有者同士が知り合い、建築をどう守るか、どう活用するかという情報を共有する。あるいは、一緒に新しいプログラムを考える。そういうつながりが生まれることも、建築の保存につながっていくと思います。
建築祭が、人と建築、人と人をつなぐプラットフォームになる。そうした場を長く提供し続けることが、私たちにできる大切な役割だと思っています。



















