フランス国立近代美術館コレクションの変遷
現在のフランス国立近代美術館のコレクションは、1818年にリュクサンブール宮殿内に設けられた「存命作家のためのギャラリー」に起源をもつ。1937年のパリ万国博覧会に合わせて建設されたパビリオン(現パレ・ド・トーキョー)に、国立近代美術館が開館したのは47年。フランス美術の紹介・振興から、国際的なアーティストの作品へと収集の幅を広げた。77年にポンピドゥー・センターへ移ると、写真や映像、90年代には建築やデザインも加わり、幅広い創作分野を横断するコレクションへと発展した。
現在、所蔵作品は約15万点に及ぶ。デッサンやアーティスト・ブック、1950年代末のコンピュータを用いた表現から人工知能を活用した現代の作品まで、その範囲は拡張し続けている。作品はこれまでパリ周辺の8ヶ所に分散して保管され、収蔵空間だけでなく、管理や保存・修復を担うスタッフの仕事場も分かれていた。
ポンピドゥー・センターの新施設「フランシリアン・ファブリック・ド・ラール」(Centre Pompidou Francilien – fabrique de l'art/イル=ド=フランス地域圏のアートの工房といった意。以下、ポンピドゥー・フランシリアン)は、作品の保管から調査、修復、梱包、輸送、展示準備までを一体的に進める拠点となる。制作部門ディレクター、クレール・ガルニエは10月12日に行われたプレス向け特別公開において、コレクションとそれを支える専門職の知識や技術を1ヶ所に集めることで、作品と来館者双方に資する美術館の仕事のあり方が変わる、と述べる。収蔵庫や工房に加え、展示や文化活動のための空間も備え、公的コレクションと、それを支える仕事を紹介する機能も担う。

作品を守る閉鎖性と、地域への開放性を備えた建築
設計を手がけたPCA-STREAMが目指したのは、作品を守る閉鎖性と地域に向けた開放性といった2つの「顔」を併せ持つ建築だ。地層を思わせる明るいベージュ色のコンクリートによる外壁は二重構造で、熱を蓄え急激な温度変化を抑える。公園の木々と池に面した公開エリアには、木材が格子状に連なる3層の回廊を設置。その中央を、パリのポンピドゥー・センターを象徴するエスカレーターのチューブ「シュニーユ(芋虫)」を思わせるジグザグの階段が走り、展示室のある階と上階の展望スペースをつなぐ。
建物は一辺約9メートルの立方体状のグリッドを基本とし、空間の柔軟性や可変性を確保している。コレクションのなかでもとくに大型の作品を収める地上階の収蔵空間は、天井下を走るダクトなどの設備を除いても約8.5メートルの高さを確保している。
展示室内から見える大きな防火扉の向こうには、延べ床面積の約6割のスペースに収蔵庫と保存・修復工房が並ぶ。各部屋の扉は用途別に色分けされ、赤は収蔵庫、緑は保存・修復工房、青は梱包、黄色は作品管理や移送、灰色はその他の物流関連の空間を示す。長い廊下を行き来するスタッフが、色を目印に目的地を把握できるようにする工夫だ。修復工房は直射日光を避けつつ自然光を取り入れられるよう配置され、窓には方角に合わせてルーバーやブラインド、遮光フィルターが設けられている。


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