草の根から既存機関までの緊急動員
1月9日、アーティストのキャスリン・アンドリュース(Kathryn Andrews)とアンドレア・ボウワーズ(Andrea Bowers)、ロサンゼルスのギャラリー・ディレクターであるオリビア・ゴーティエ(Olivia Gauthier)とアリエル・ピットマン(Ariel Pittman)、アート専門家ジュリア・V・ヘンドリクソン(Julia V. Hendrickson)が、ロサンゼルスを拠点とするBrickギャラリーと提携し、草の根基金「Grief and Hope」を立ち上げた。この募金活動は、ロサンゼルスの住民や外部からの支援希望者の声に応えるかたちで生まれたものである。最初は、家やスタジオを失ったアーティストやアートワーカーへの緊急支援として50万ドル(約7610万円)の目標で始められたが、現在ではその目標を大きく上回り、2400人以上の寄付者から約70万ドル(約1億652万円)が集まり、目標額も75万ドル(約1億1413万円)に引き上げられている。ロサンゼルスの火災による影響を受けたアーティストたちは、アンケートに回答することで、基金がその緊急のニーズに応じて資金を平等に分配できる仕組みとなっている。
また、市内の主要なアート機関も連携し、ロサンゼルスのクリエイティブコミュニティに対する即時の支援を提供している。ゲティはロサンゼルス・カウンティ美術館、ロサンゼルス現代美術館、ハマー美術館などとの協力を進め、アーティストやアートワーカーを支援するための1200万ドル(約18億2604万円)の「LAアーツコミュニティ火災救済基金」を設立し、ロサンゼルスのアート機関が一丸となって支援を行っている。

さらに、小規模で地域密着型のイニシアティブも続々と立ち上がっている。地元のキュレーターやギャラリー、アーティストたちは、自分たちのプラットフォームを通じて、オンライン展示やオークションを開催し、アート作品を購入することで得られた収益をこれらの支援基金や影響を受けたアーティストたちに寄付している。「Artists for Los Angeles」は、ロサンゼルス在住のアーティストによる作品を販売するチャリティーショーで、すべての収益が「Grief and Hope」に寄付される。また、「One Hundred Percent」では、家やスタジオを失った90人のアーティストによる作品を展示し、収益の100パーセントをアーティストに直接渡すようにしている。多くのアーティストは個別にGoFundMeを立ち上げ、寄付を受け付けて即時の支援を提供している。これらの募金活動のリンクは、雑誌『Carla』の創設者リンジー・プレストン・ザッパス(Lindsay Preston Zappas)によってひとつのドキュメントにまとめられ、整理されている。こうした募金活動の例が最近ロサンゼルス市内に多数現れ、アートを通じて被災に対応しようとする強い意志が見て取れる。