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2023.12.31

読者が選ぶ2023年のベスト展覧会。トップはディオール展

ウェブ版「美術手帖」では、2023年に開催された展覧会のなかからもっとも印象に残ったものをアンケート形式で募集(集計期間:12月11日〜25日)。約330件の結果を集計し、寄せられたコメントとともに結果を発表する(対象展覧会は今年行われたもの。昨年から会期がまたぐものも含んでいる)。

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展より
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 2023年、ウェブ版「美術手帖」読者の心をもっとも掴んだのは東京都現代美術館のの「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展(2022年12月21日~2023年5月28日)だった。

 同展は、2017年のパリ装飾芸術美術館で話題を集め、その後ロンドン、 ニューヨークと世界を巡回してきたもの。クリスチャン・ディオールが1946年に創設したクチュールメゾン「ディオール」の創設70周年を機にスタートしたプロジェクトで、13ものセクションで、クリスチャン・ディオール、イヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリといった歴代のクリエイティブ ディレクターたちの作品が並び、ディオールクチュールの全貌、そしてディオールと日本との関係をも紹介するものとなった。

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展より

 キュレーションはパリ展から「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」を手がけてきたフロランス・ミュラーが、会場デザインはOMAのパートナーとして国際的に活躍する気鋭の建築家・重松象平が手がけ、二度と実現的ないであろう規模の展覧会へと仕立てた。入場者数でも約28万人を動員しており、今年前半の話題をさらった展覧会だ。

圧倒的な展示構成。ファッション関係の展覧会でアートらしさを感じたことの至福。最初から最後まで魅了されっぱなしでした。
施工、ディスプレイ、作品の扱いが他展覧会と比べても圧倒的に美しく、目から鱗でした。類似のファッション展では到達できなかったあの人気具合は、細部に渡るデザインと品質管理あってこその結果だと感じた。
行き慣れた現美であることを忘れてしまうほど作り込まれた空間が素晴らしかった。歴代6人のデザイナーのアーカイブが一堂に会した様は圧巻でした。
近年稀に見るスペクタクルな展覧会だった。写真映え重視な内容なのかと思ったが、ちゃんとメゾンディオールの歴史や精神性、支える職人技、日本との関係性が示されており充実した内容だった。全ての作品が美しく、長く並んだ甲斐のある展覧会だったなと思ったので選出した。
現美の建築を最大限に活かした展示空間、JAPAN仕様部分のこだわり方、検証、現代美術館所蔵品とディオールのセッション展示など、現代美術館でしか成しえなかった展覧会だと思う。現美が97年「身体の夢展」から積み上げてきた服飾展示へのこだわりは確実にDIOR展でも活かされていた。これを見て人生が変わる人もいるだろう。夢と希望を見せてくれた美術展だった。間違いなく今年ナンバーワンだった。

 今年は次点も同じ美術館の展覧会となった。東京都現代美術館の「デイヴィッド・ホックニー展」(7月15日〜11月5日)だ。

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景より、《ノルマンディーの12か月》(2020-21)。東京都現代美術館 2023年 ©David Hockney

 現代を代表する画家のひとりであるイギリスの美術家、デイヴィッド・ホックニー。本展は、日本における27年ぶりとなる大規模個展として開催前から注目を集めてきた。これまで紹介される機会が少なかった00年代以降の作品も多く来日した同展。《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》や《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》といった大作が並ぶなかでも、全長90メートルを超える大作《ノルマンディーの12か月》(2020-21)は圧巻だった。

全長90メートルにおよぶ新作が素晴らしかった。作品の中を散歩しているような気持ちになりました。撮影もOKにしてくれて良かった♪
作品数、展示内容、展示方法、グッズ、チラシなど、すべてが、興味をそそる、その空間にいて楽しかったから。
ホックニーがもともと好きだったが、新しい作風がとても良かった。明るくてパワーに満ちていて励まされる絵だった。生きていく希望に満ちていた。買ったハガキを部屋に貼っているが、いまだにパワーを感じる。
すべての作品に、日々の生活の営みへの愛が溢れていた。心洗われる作品群だった。iPadを使った創作で絵巻物のように四季折々を描いた作品は日日是好日を感じた。
とても楽しかった。 作品ありきなのですが、見せ方もタブレットで製作するプロセスを見れたこと、作品の色と会場の照明の暗さ加減が心地よかった。

 3位は東京都美術館の「マティス展」(4月27日〜8月20日)。フォーヴィスム(野獣派)で知られる20世紀の代表的な画家、アンリ・マティスの日本では約20年ぶりとなる大規模回顧展とあって、こちらも話題となった展覧会だ。ポンピドゥー・センター/国立近代美術館の全面的協力を受け、日本初公開作品を含む約150点が並んだ。

展示風景より、手前から《赤の大きな室内》、《黄色と青の室内》、《マグノリアのある静物》
展覧会の構成やボリューム感のバランスもよく全体がとても綺麗にまとまっていたのが個人的に今年の中で一番印象深かったから。
マティスの生涯を説明しながら作品を見せてくる展示の仕方もよく、とても好きでした。最後の教会の動画は涙が出るほど感動しました。グッズも充実していて本当に楽しかったです。
本当に一人の画家の作品を集めたのかと疑うくらい画風の変わるマティスの作品たちが集結した展覧会。この展覧会に行くまであまりマティスに興味がなかったが、全てを鑑賞し終える頃にはマティスの魅力にどっぷりとハマりました。本当はミュージアムショップでポスターを購入して部屋に飾りたかったけど、飛行機移動だったため綺麗に持って帰ることができるか不安で断念。やっぱり買っておけば良かったと今でも後悔しているくらいマティスに魅せられました。

 4位はアーティゾン美術館の全展示室を使用した大規模展「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」(6月3日~8月20日)。セザンヌを筆頭とする印象派を抽象絵画の起源ととらえ、その後の興隆、発展を転換するもので、同館の新収蔵作品95点を含む約250点が並んだ。たんに抽象絵画を並べただけでなく、その定義をも再考させるようなもので、注目度は高かったといえる。

「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」より
作品の物量が骨太、かつ網羅的で、この美術館は頼り甲斐があると感じたため。
国内外の多様な抽象絵画を体系的に観られて感動的だった。抽象絵画とはなんなのか、様々な角度から考えるきっかけをもらった。
セザンヌを源流とする20世紀から今日にいたる絵画の展開、具象/抽象のゆらぎを楽しむことができた。

 5位は同数で東京国立博物館の特別展「やまと絵―受け継がれる王朝の美―」(10月11日〜12月3日)と国立新美術館の「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」(7月12日〜10月2日)が並んだ。

国宝、重要文化財が全国から多数集められ、多面的なやまと絵の歴史──つまり、日本美術の大きな流れを、見渡すことのできる展覧会だった。(やまと絵展)
これほどの質を揃えた日本美術展はかつてなかったように思います。その意味では今年だけでなく歴史上でも最も見応えのある展覧会であったのではないでしょうか。その多くが一般によく知られた作品ではなかったことも、むしろ日本美術の見識を広めてくれるような展示でもあったと思います。あまりに凄いので何度もあちこちで倒れそうになりました。(やまと絵展)
「やまと絵―受け継がれる王朝の美―」展示風景より、国宝《聖徳太子絵伝 第一面・二面》(平安時代・1069)東京国立博物館
光をテーマに様々な年代の作家の作品が同じ空間で観られる通常余りない展覧会で新鮮な驚きがあったから。(テート美術館展)
ロマン主義(?)から現代アートまで網羅していて驚いたし、そんなボリュームのある展示でも最後まで楽しめたから。「光」というテーマにリヒターの作品を選んでいるところも面白いと思った。(テート美術館展)
展示風景より、オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》(2014)

 このほか、青森県立美術館の「奈良美智: The Beginning Place ここから」(10月14日〜2024年2月25日)、東京ステーションギャラリーの「佐伯祐三─自画像としての風景」(1月21日〜4月2日)、京都市内で開催の「AMBIENT KYOTO 2023」(10月6日〜12月31日)、グッチ銀座 ギャラリーの「YUZURU HANYU: A JOURNEY BEYOND DREAMS featured by ELLE」(6月28日〜8月20日)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「中園孔二 ソウルメイト」(6月17日〜9月18日)、東京国立近代美術館の「重要文化財の秘密」(3月17日~5月14日)などが票を集める結果となった。

奈良さんの故郷青森で開催された展覧会は、タイトルのとおりはじまりをとても感じられるもので、この土地でつくられた根っこのようなものが、現在までの過程でも変わることなく、でもより広く深く、つよくなっていくのを見られた気がしました。素晴らしいものでした。(奈良美智: The Beginning Place ここから)
青森出身の奈良さんが青森から旅に出てまたこの地に帰って来たという感じで良かった。 他には巡回せずに青森のみでしか見れないというのも凄い鑑賞する私達も感慨深く、奈良美智さんを近くに感じれた。 こういう展覧会ってあんまりないかなと思ったので、選ばせていただきました。(奈良美智: The Beginning Place ここから)
大阪 東京 巴里 ~ 孤高の天才 佐伯祐三さん 広範な作品の展示 ~ 足跡を辿る レイアウトの絶妙なバランス 照明 見事に心に残る展覧会でした。 有り難う。(佐伯祐三─自画像としての風景)
重要文化財のレンガ壁とほとばしるような佐伯の暗い情念のマッチングは完璧でした。(佐伯祐三─自画像としての風景)
味覚以外の感覚が研ぎ澄まされるような、体全体で感じられるエキシビジョンでした。 坂本龍一さんの音楽、高谷史郎さんの映像、会場で渡される香り、サラウンドで体に響く音響、そして雰囲気のある高い天井の会場 全てが合わさったときに体全体が包み込まれて今までに感じたことのない体験でした。(AMBIENT KYOTO 2023)
音楽をテーマにしたインスタレーション自体は珍しくないが、印刷工場跡地という会場の選択の素晴らしさと会場に合わせた音響設計も行き届いていて、他の同様の展示より圧倒的に優れていた。(AMBIENT KYOTO 2023)
フィギュアスケーターの域を超えた羽生結弦の身体表現と、GUCCIという歴史を誇るハイファッションの融合として、新たな魅力を伝えるギャラリーとして、被服のラインと身体のラインの美しさ、写真の構成、会場の構成としてロケーションも含めてたのしむことができた。(YUZURU HANYU: A JOURNEY BEYOND DREAMS featured by ELLE)
アスリートならではの躍動感溢れる写真と逆にアスリートというのを忘れてしまうほどのエレガントな写真の対比が鏡の回廊のようなギャラリーに映し出されることでさらに鮮明に美しく、写真家被写体空間すべての個性が絶妙に混ざり合った独特で魅力ある展覧会でしたので。(YUZURU HANYU: A JOURNEY BEYOND DREAMS featured by ELLE)
2015年に亡くなられた中園孔二さんが、最後に過ごした土地で開催された過去最大規模の個展。居住地の横浜からは少し遠い場所でしたが、必見だと思い鑑賞してきました。 美術館に収蔵されている作品や、コレクターの方の収蔵品など代表的な作品が集まっているだけでなく、小作品の作品群では画集に載っていない作品も多くあり見応えがありました。また、創作活動の元となる資料の展示も充実していたので、中園さんの事をより感じられる素晴らしい展覧会だったと思います。(中園孔二 ソウルメイト)
重要文化財の絵画・彫刻が一堂に集まった展示は圧巻でした。(重要文化財の秘密)