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読者が選ぶ2021年のベスト展覧会。トップはマーク・マンダース展

美術手帖では、2021年に開催された展覧会のなかからもっとも印象に残ったものをアンケート形式で募集。約300件の結果を集計し、寄せられたコメントとともに結果を発表する。

展示風景より、《乾いた土の頭部》(2015-16)

 2021年、美術手帖読者の心をもっともつかんだのは、東京都現代美術館で開催された「マーク・マンダース ─マーク・マンダースの不在」(3月20日〜6月22日)だった。

 この展覧会は、「建物としての自画像」という構想に沿って作品制作を行うことで知られているアーティスト、マーク・マンダースの国内美術館では初となった個展。マンダースは21年2月末まで、金沢21世紀美術館でミヒャエル・ボレマンスとの2人展「ダブル・サイレンス」を開催しており、名前を聞く機会も多かっただろう。会場は作家本人の構想により、展示全体を「想像の建物」のインスタレーションとして構成。《マインド・スタディ》や《4つの黄色い縦のコンポジション》、《乾いた土の頭部》などが出品され、空間全体を区切らず、「ひとつの作品」として展開された。

 また会期終了後には作品が再構成され、あらたに特別展示「マーク・マンダース:保管と展示」として開催。11月1日には、美術館近くのコーナンに《狐/鼠/ベルト》が突如として登場するなど、マンダースの存在を意識する期間が長かったと言える。

作品もさることながら、タイトルが秀逸だった。
コロナ禍でマークマンダース本人が来日できなかったことをタイトルに落とし込んだ本展覧会。展覧会に惹きつける上でファーストインパクトとして名前も重要であることを改めて学んだ。展示自体も広い空間を必要とするマンダースの作品が見栄えよく活かされていた。会期後に近隣スーパーのフロアに突如マンダースの作品が出現したのも、今後の日本の展覧会の形を変えていく一歩になりそう。
企画展後の常設展での展示も含め、実物を鑑賞しないと体感できないスケールの作品をまとめて観られて非常に印象深い展覧会でした。
個々の作品の圧倒的存在感はもとより、展示空間自体が作品となる構成は秀逸。二度と見られない展覧会だと感じた。
海外のアーティストの展覧会は、過去の作品の紹介だけになってしまいがちですが、一つの作品として楽しめました。また、一つ一つがデカくて気分がよかったです!!!
展示風景より、《2つの動かない頭部》(2015-16)

 マンダースに続き、次点となったのは東京国立博物館の特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」(4月13日〜6月20日)。人気が高い高山寺の国宝《鳥獣戯画》4巻の全場面を一挙に公開するという展示で、開幕前から大きな話題を集めていた。緊急事態宣言によって1ヶ月におよぶ臨時休館を余儀なくされたが、やはり鳥獣戯画は強かった。甲巻はエスカレーターにに乗って鑑賞するというこれまでにない斬新な方式もインパクトが強かったようだ。

一部ではなく勢揃いしてた事が素晴らしかった。エスカレーター式での見学斬新。
動く歩道での感染症対策、混雑緩和と音声ガイドとのタイミング併せを併用した展示が新しく、面白かった。
甲乙丙丁の全4巻がまとめて見れたところ、甲巻は動く歩道でゆっくり細部まで見れる工夫をされていたところが良かったです。音声ガイドもわかりやすかったです!

 3位は同率で東京都現代美術館「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」と森美術館「アナザーエナジー展」がランクイン。

 石岡瑛子展は、アート・ディレクター、デザイナーとして世界を舞台に活躍した石岡瑛子(1938〜2012)の世界初となる大規模回顧展。担当キュレーター・藪前知子が「この規模の回顧展はおそらくもうできないのではないか」と語ったように、膨大な石岡のコラボレーションワークを一望できる充実の内容だった。

石岡さんの魂が展示会場に漂っているかのような、非常に強い触発を受けた展示でした。
簡潔にまとめられてありながら、過不足なく、かつ迫り来る石岡瑛子氏の気迫を存分に感じられた展示であったから。
彼女のデザインされたグラフィックや衣装などが際立つような展示と、いかに沢山の素晴らしい作品を生み出していたのかが、よくわかって良かった。

 女性アーティストたちに注目が集まるなか、森美術館の「アナザー・エナジー展:挑戦しつづける力─世界の女性アーティスト16人」は大きなインパクトを与えるものとなった。参加作家の年齢、国籍も幅広く、いずれの作家も長いキャリアを築いてきた力強いエネルギーを感じさせる展示だった。

三島喜美代の作品に衝撃を受け、インタビューの「命がけて遊んでいる」という言葉に胸を打たれました。あまりにも心を揺さぶられたので、城南島アートファクトリーにも行きました。
女性による女性のエンパワメントの文脈が全面に示されていて勇気づけられた。とある展示では感極まって泣いてしまった。
女性アーティストの展覧会自体が日本では珍しく嬉しかった。また、インスタレーションへの偏りの少なさもよかった。何度も訪れて考え直したいテーマだと感じた。
「アナザー・エナジー展:挑戦しつづける力─世界の女性アーティスト16人」展より、フリーダ・バーロウ《アンダーカバー2》(2020)

 なおアンケートではこのほか、「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」(ポーラ美術館)、「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」(東京都美術館)、「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」(三菱一号館美術館)、「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island-あなたの眼はわたしの島-」(京都国立近代美術館、水戸芸術館)、「コレクター 福富太郎の眼」(東京ステーションギャラリー、あべのハルカス美術館)なども票を集めた。

自身の中で今までと違った感性と出会えた気がする
水を題材とした時に彼女が形にする彫刻や写真のアートという表現と、ムービーでの詩の朗読、水という物体に対してのロニ・ホーンなりの哲学が新鮮だった(ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?)
全く異なるものそれぞれの土地でそれぞれの時に作り出していた5人だが、共通して「よりよく生きるために創ることをやめなかった」という情熱を持っていたことひしひしと感じられたとても良い展示だった。(Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる)
ゴッホ展と悩みましたが、やはりレッサー・ユリィの絵に衝撃を受けたので。ユリィの他にも、もちろんモネやルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンと見応え満点で、とても満足のいく展覧会でした。(イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン)
鑑賞者と作品が一体化するような特殊な展示様式が良かった。フェミニズムなど作品が扱っていたテーマも含めて今こそ見るべき展覧会という感じだった。(ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island-あなたの眼はわたしの島-)
凄まじい作品たちが放つ力とそれの勢いを殺さずコントロールした展示。よくぞこの作品たちを一堂に会してくれた!と唸るばかり。(コレクター 福富太郎の眼)

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