アートウィークが生み出す新たな交流
では、5回目の本開催を迎えたAWTは、東京のアートシーンに何をもたらしてきたのだろうか。
その変化のひとつとして挙げられるのが、海外からのアート関係者の来訪が、単発の訪問から継続的な交流へと発展しつつあることだ。香港を拠点とするSerakai Studioの共同創設者、トビアス・バーガーは、AWTによって海外のキュレーターや美術館関係者が東京に数日間滞在するようになり、複数の展覧会を訪れながら関係を築く機会が増えたと指摘する。

バーガーによれば、以前は短期間の訪問が中心だった海外のゲストも、近年は3〜4日間滞在するようになった。また、香港をはじめアジア各地から毎年繰り返し訪れる関係者も増えており、初めての出会いが継続的な仕事上の関係へと発展しているという。海外からの来訪者が増えたことは、東京のギャラリーや美術館が11月に力を入れた展覧会を企画する動機にもなっている。
こうした変化は、AWTの公式プログラムだけでなく、その開催時期に合わせて企画される自主的な展覧会やイベントにも表れている。
表参道のPath Omotesandoでは、Serakai Studioが今年7月から展覧会「Certainly Tokyo」を開催している。11月4日と5日には、チェン・リャンジュンによるパフォーマンス《ebb is to flow as wax is to wane》が行われた。コンクリートの空間に吊るされた黒い蜜蝋の構造物に、作家がゆっくりと移動しながら火を灯し、消していく。蝋と重力によって刻々と変化する作品は、時間の経過とともに姿を変える一時的な環境をつくり出した。

バーガーは、近年のAWTについて、参加者の顔ぶれだけでなく展覧会の内容も充実し、ネットワークが強化されていると評価する。また、展覧会に加え、パフォーマンスやパーティー、トークなどが重層的に展開されることで、異なる分野の人々が出会う機会も生まれているという。
ほかにも、アートと音楽を横断する「Tokyo Jazz Club」が今年初めて開催され、アートウィークに集まる人々に新たな交流の場を提供している。また、目黒のHIGASHI-YAMA Tokyoでは、メキシコ出身のアーティスト、ガブリエル・オロスコとデザイナーの緒方慎一郎による「Project O+O」が11月6日に始まった。メキシコのギャラリー、kurimanzuttoと、文化芸術プロデューサーでアートエージェンシー「Jam Acuzar」の創設者であるジャム・アクザールが共催する同プロジェクトは、東京、メキシコシティ、パリの3都市をつなぐ長期的な取り組みだ。

幕開けとなる展覧会「Gabriel Orozco at HIGASHI-YAMA Tokyo」では、会場となるレストランをオロスコの「家」に見立て、絵画や日用品、緒方による空間設計、そして食の体験を一体化させる。メキシコの伝統的な調理器具を使った料理や、日本の職人による器なども取り入れ、アートと食、もてなしの関係を探る。
アクザールによれば、この企画はオロスコ、緒方、kurimanzuttoらとの約3年間にわたる対話から生まれたものだという。アートパトロンでもあり、毎年様々なかたちでAWTに関わってきたアクザールは、当初はギャラリーを巡る比較的小規模なイベントだったAWTが、国内外のアート関係者が集まり、新たな企画を生み出すプラットフォームへと成長したと感じている。自身もTokyo Jazz Clubに関わるなど、複数のプロジェクトを通じてその変化を実感しているという。
また、今年新たに自身のアートエージェンシーを立ち上げたアクザールにとって、AWTを通じて築かれてきた人間関係は大きな支えとなっている。「AWTは、東京のアートシーンを発見するだけでなく、そこに深く関わるための入口になっています」と語り、今後はファッションやデザインなど、アート以外のクリエイティブな分野との交流がさらに広がることにも期待を寄せる。




















