国際化の先にある課題
いっぽう、AWTの規模や国際的な認知度が高まるにつれ、新たな課題も見えてきた。
バーガーが指摘するのは、日本の美術館やキュレーターによる国際交流への参加だ。海外から優れたキュレーターや美術館関係者が集まるようになったいっぽう、日本側がその機会を必ずしも十分に活用できているわけではないという。「若手からベテランまで、もっと多くの日本のキュレーターが展覧会やトーク、ネットワーキングの機会に参加すべきだと思います」と語る。
中谷もまた、AWTがギャラリー同士や美術館などの機関との交流を促進する点を評価しながら、さらなる発展の可能性を指摘する。現在は11月の数日間に多くのプログラムが集中しているが、ギャラリーや参加機関がより柔軟にスケジュールを調整し、共同で企画を進めることで、年間を通じた活動へとつなげられるのではないかという。中谷は、AWTが「ギャラリー同士のネットワークを強化し、知識を共有する」ための機会となることにも期待を寄せる。

もうひとつは、海外から招かれるVIPと、東京で日常的にアートに接する一般の観客との関係だ。AWTは国際的なコレクターやキュレーターにとって重要な機会となっているが、その成果が一部の専門家だけにとどまってしまっては、地域のアートシーン全体の発展にはつながらない。
中谷は、作品の購入を目的としない人々も含め、ギャラリーが幅広い観客に開かれていることの重要性を強調する。また、国際化を欧米のアートシーンとの接続だけで捉えるのではなく、アジアやアフリカなど多様な地域との関係から考える必要性も指摘する。「『国際的』という言葉が、ヨーロッパやアメリカの基準で定義されすぎているのではないでしょうか」と問いかけ、東南アジア、中東、アフリカ、南米などの視点を、キュレーションやプログラムの構成にもっと取り入れるべきだと語る。
こうした意見は、AWTの成果を否定するものではない。むしろ、東京が国際的なアートイベントの開催地として認知され始めたからこそ、次に何を目指すべきかという問いにつながっている。
蜷川自身も、当初掲げた「東京を世界のアートカレンダーに位置づける」という目標については、すでに一定の成果を得られたと考えている。いっぽう、AWTが目指すのはたんにアートマーケットを拡大することではない。「私たちはマーケットを中心にしたイベントというよりも、日本のアートについての議論を国内外の人々と共有する、文化的・制度的な役割を担う取り組みとしてAWTをつくってきました」。

日本のアートを海外に紹介する際、蜷川が重視してきたのは、作品を海外へ持ち出すだけでなく、それが生まれた文化や場所の文脈を伝えることだ。海外から訪れた人々が実際に東京を歩き、それぞれのギャラリーや美術館で作品に出会うAWTの仕組みは、そのための有効な方法となっている。
5回目の本開催を迎えた今年、AWT FOCUSの分散化と周辺で生まれる多様な自主企画は、AWTが東京のアートシーンに一定の変化をもたらしてきたことを示している。そこで生まれた交流がどれだけ持続的な協働につながり、日本のアート関係者や地域の観客にも開かれていくのか。東京を世界のアートカレンダーに位置づけるという最初の目標を経て、AWTはその先にある役割を問われている。



















