東京の現代アートを国内外に発信する「アートウィーク東京(AWT)」が11月4日に開幕した。会期は11月8日まで。2022年の本格始動から5回目を迎える今年は、過去最多となる56の美術館・ギャラリーが参加。都内各所で展覧会やトーク、パフォーマンスなどが展開され、無料のシャトルバス「AWT BUS」が点在する会場を結ぶ。
今年の最大の変化は、AWTが独自に企画する「AWT FOCUS」の開催形式が刷新されたことだ。2023年に「買える展覧会」として始まった同プログラムは、これまでひとりのキュレーターがひとつの会場で展覧会を構成してきたが、今年はウィーンのギャラリーフェスティバル「curated by」との協働により、国内外で活動する10組のキュレーターが都内10ヶ所のギャラリーやアートスペースでそれぞれ展覧会を企画する分散型へと転換した。

もともとAWTは、ひとつのメイン会場を持たず、東京に存在する美術館やギャラリーを結ぶことで成立するイベントだ。今回の変更によって、AWT FOCUSもまた、その理念を体現するプログラムとなったと言える。
AWTディレクターの蜷川敦子は、この変更の背景について次のように語る。「日本のアートシーンには、もともと様々な人たちによる豊かで面白い活動が存在しています。ただ、それを発信する力が十分ではなかった。そうした『点』を『線』でつなぎ、そのためのインフラを整えることがAWTの仕事だと考えてきました」。
蜷川によれば、最初の3年間はAWT FOCUSを通じてひとつのビジョンを提示する必要があったという。しかし、保坂健二朗(2023)、片岡真実(2024)、アダム・シムチク(2025)による3回の展覧会を経て、次の段階へ進む準備が整った。「最初にひとつの例を示したうえで、今度は実際にアートシーンをつくっている参加者の皆さんに主体性を渡し、それぞれがつくるものを見せていく。今回10ヶ所へと広げたのは、そうした考えからです」。
東京を巡りながら出会う10の展覧会
新たなAWT FOCUSでは、どのような展覧会が展開されているのか。開幕前に行われたメディアツアーでは、一部の会場を訪問した。南麻布のMISA SHIN GALLERYでは、韓国のキュレーター、シン・ジェミンが企画した青柳菜摘の個展「有り得べき言葉、有り得べき世界」を開催。東京湾の埋立地や戸籍制度などを題材に、土地の所有や人間関係を規定する社会制度を問い直す展覧会だ。いっぽう、東麻布のTake Ninagawaでは、ポーランドのキュレーター、マリア・ブレヴィンスカによる鴨治晃次の個展「Everyday Life」が開催されている。1959年にポーランドへ渡った鴨治の作品を通じて、日常と個人的記憶、戦後の歴史が交差する世界を紹介している。

また、銀座の思文閣銀座では、元ロサンゼルス現代美術館館長のジェレミー・ストリックが、アメリカの画家メアリー・ウェザーフォードの日本初個展「Komorebi」を企画。光や色彩、場所の記憶をめぐる絵画表現を紹介する。これらの展覧会からは、単一のテーマのもとに作品を集めるのではなく、それぞれのキュレーターの視点やギャラリーの特色を生かす、今年のAWT FOCUSの多様性が見えてくる。
AWT FOCUSの参加ギャラリーのひとつである南青山のspace Unでは、イギリスを拠点とするキュレーターでライターのエコウ・エシュンが、シエラレオネ出身のアーティスト、ジュリアンノックスの日本初個展「How Much Light Must I Consume」を企画した。映像、詩、音楽、パフォーマンスを横断するジュリアンノックスは、アフリカとディアスポラの歴史、移動、記憶、帰属を探求してきた。本展でも、声や歌、映像を通じて、異なる土地や世代をつなぐ文化の伝達が重要な主題となっている。

space Unのディレクター、中谷尚生にとって、AWTへの参加は今回が2回目となる。開廊から約2年半の同ギャラリーは、アフリカやそのディアスポラに関わるアーティストを日本で紹介するだけでなく、彼らがアジアを起点に国際的な議論へ参加するためのプラットフォームとなることを目指している。
中谷は、AWT FOCUSを通じて海外のキュレーターと協働することが、ギャラリーの活動を国際的な文脈に位置づける機会になると評価する。とくに今回の形式は、東京のギャラリーが海外のキュレーターと築いてきた関係性を可視化するものだという。「ギャラリーは商業的な場でもありますが、アートにはつねに人と人との関係があります。作品を売買するだけでなく、キュレーターとも長期的な関係を築いていることを示せるのは重要です」と語る。






























