伊東豊雄の建築にジュリアン・オピーが登場
続いて舞台は松本市街地へと移る。まつもと市民芸術館は、建築家・伊東豊雄の設計によって2004年に完成した、松本を代表する現代建築のひとつだ。曲線を描く外壁や、ガラスをはめ込んだGRC(ガラス繊維強化コンクリート)の外装が特徴的なこの建築は、舞台芸術の拠点としてだけでなく、市民が自由に行き交う公共空間としても計画されている。

今回ここに展示されるのが、イギリスの現代美術家ジュリアン・オピーによる彫刻シリーズ「Busan Walkers」だ。オピーは、人物や風景を単純化された輪郭と鮮やかな色彩によって表現する作品で知られる。今回展示されるのは、韓国・釜山の海辺を歩く人々を撮影し、その姿をドローイング、さらに立体へと展開した作品。4つの作品それぞれの人物は顔の表情などが大胆に省略されているものの、服装や髪型、歩幅や腕の振り方といった特徴によって、固有の人物像として表現されている。

正面からは平面的なイメージのように見えるいっぽう、視点を変えることで彫刻としての存在感が立ち上がる。実際の人間よりもやや小さくつくられた身体は、街なかを行き交う匿名の人々の姿を思わせる。まつもと市民芸術館の設計において伊東が重視したのも、人々が建築のなかを自由に回遊できる開放性だった。人が歩くという日常的な行為を主題とするオピーの作品は、そうした建築の思想とも響き合う。



















