
「あたりまえの日常が、おもしろくなるデザインイベント。」をスローガンとするデザインの祭典「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE」が今年も開幕した。会期は11月4日まで。第2回となる本イベントの見どころをレポートする。
「あたりまえの日常が、おもしろくなるデザインイベント。」をスローガンとするデザインの祭典「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE」。その第2回が11月4日まで開催されている。
東京ミッドタウンは、デザインの発信拠点として、2007年から24年まで17回にわたり「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」を開催。展示や各種プログラムなどの多彩なアプローチを通じてデザインの可能性や魅力を伝え、数多くの来場者とデザインの出会いを重ねてきた。2025年、その理念を受け継ぎながら、より日常との接点に着目した新たなデザインイベント「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE」へと再始動。街そのものを舞台に、デザインがもつ創造力や発見の楽しさを発信し続けることで、人とデザイン、人と人、そして街と社会をつなぐきっかけを生み出している。

第2回目のテーマは「みつめる」
第2回となる今年のテーマは「みつめる」。膨大な情報やイメージが絶えず行き交う現代において、じっくりと何かを「みつめる」時間や体験を通じ、新たな思考や創造に出会うきっかけを提案する。
本イベントでは昨年に引き続き、全体のクリエイティブディレクションを佐藤卓(グラフィックデザイナー)が、デザイン作品を展示する「DESIGN LIVE EXHIBITION」のキュレーションを土田貴宏(デザインジャーナリスト)が務める。開催にあたり、佐藤と土田はそれぞれ次のようにコメントを寄せた。
「長いあいだデザイナーとして活動していくなかで、デザインは『何かと何かのあいだを、適切につなぐもの』であると実感してきた。本イベントでは、そういったデザインの存在に目を向けることで、日常のおもしろさに気がつくきっかけを生み出すことができればと考えている」(佐藤)。

「『DESIGN LIVE EXHIBITION』の出展クリエイターについては、ここ1~2年のあいだに注目した作品や活動を踏まえて、新進気鋭からすでに実績のある方々のなかから『みつめる』のテーマに相応しい方にお声がけした。会場の作品を『みつめる』ことを通じて、デザイナーの視点を追体験することができるだろう。また、海外におけるコレクティブルデザインの拡大にも注目し、実験的、批評的な視点を含んだ作品も取り上げた」(土田)。

注目の「DESIGN LIVE EXHIBITION」、見どころは?
本イベントのメインコンテンツとなるのが、国内外で活躍するクリエイターや新進気鋭の作家による作品を紹介する「DESIGN LIVE EXHIBITION」だ。今年は全19組が、東京ミッドタウンの芝生広場やガレリアを舞台に、「みつめる」をテーマとした作品を展示。鑑賞者はクリエイターたちのまなざしに導かれながら、作品を体感することができる。ここでは、会場を彩る作品群のなかからハイライトを紹介したい。
芝生広場でデザインを「みつめる」
まず芝生広場では、今回のピックアップクリエイターとして、veig(ヴェイグ)+本多沙映、狩野佑真、TAKT PROJECTの3組が独自のアプローチを展開する。
研究者の片野晃輔と造園家の西尾耀輔によるユニットveigと、デザイナー/アーティストの本多沙映は、芝生のなかに人工植物を展示し、自然と人工の境界を探る「世界のふるまいをみつめる」という視点を提示した。


例えば、庭や建物、街並みなどの空間に配される「植栽」の作品をよく見ると、木々の隙間にフェイクプランツが埋め込まれていることに気づく。木々の成長するスピードと、人が自然を手軽に生み出そうとする時間の違いを「みつめる」作品と言えるだろう。
ほかにも同広場には、ススキや花の特性にまつわる作品も展示されている。植物の特性と風景のなかに潜む違和感。そのアプローチが何を示しているのかをじっくり観察してみてほしい。


デザインスタジオ・NOUを主宰し、プロダクトデザインを基軸に活動する狩野佑真は、剪定などで廃棄される枝葉を水性アクリル樹脂で固めた独自素材「ForestBank」をスツールにし、丸太と組み合わせた作品を出展している。
注目したいのは、この素材に含まれた端材が見せるユニークな表情だ。表面加工されて現れる大小様々な木の形状や模様は、顕微鏡を覗いたときに見えるミクロな生物の世界をも思わせる。丸太の存在感と見比べることを通じ、木が秘める豊かなポテンシャルを再発見することを試みている。


東京と仙台を拠点とするデザインスタジオ・TAKT PROJECTは、人間が設定した計画や目的から離れ、環境との対話から生み出すものづくりを探求するインスタレーション「関係のレッスン - Dialogue with Trees -」を展開している。
同作品では、東京ミッドタウンで生育する植物を見つめ、環境のスキャンデータの視点も重ねながら、そこに手を加えたくなる衝動を3Dプリンターで具現化した。空間のドローイングのように立ち上がる白いラインを通じて、人と環境のあいだに生まれる新しい関係に思考を巡らせたアプローチとなっている。
館内のガレリアでもデザインを「みつめる」
イベント期間中は東京ミッドタウンの館内にも「DESIGN LIVE EXHIBITION」が展開されており、ショッピングとともに多彩な作品を見ることができるのも魅力のひとつだ。ここでは、館内各所にある展示作品から、ガレリアB1に展示される2つの作品を紹介したい。

デザイナーで美術作家の寺山紀彦は、本物の植物とプラスチック製の植物を整列させた「Artificial and dried flowers that were arranged」を展示している。寺山は本作が喚起しようとするものについて、次のように解説した。「木々を等間隔で植えた森林にプラスチックのゴミがあると嫌な気分になるのに対し、本作のような自然物とプラスチックの規則的なコンポジションを見つめる体験は、不思議な心地よさを感じさせます」。自然と人工が調和した円形の美しい世界は、自然と人間が共存する理想郷のようにも感じられた。


もうひとつ取り上げたいのが、プロダクトデザイナーでありデザインコレクティブ「tog」を主宰する春江紗綾の「Still Staring」だ。家具に取り付けられたデバイスが、通り過ぎる来場者をじっと見つめている。「みつめる」という能動的な行為を促す本イベントに対し、「見つめられる」「見つめ返す」という逆のアプローチを取り入れたユニークな発想が印象的だ。デバイス自体の完成度の高さも見どころのひとつと言えるだろう。


ブックマーケットや音楽ライブイベントも登場
DESIGN LIVE EXHIBITIONに加えて、今年は「みつめる」をテーマとするユニークなイベントも多数用意されている。

10月24日・25日には、全国の個性豊かな書店や文具店が集うブックマーケットイベント「DESIGN LIVE MARKET by 読の市」を開催。新刊や古本を扱う独立系書店など38店舗が東京ミッドタウンに集結し、本を通じて自身を「みつめる」体験を提供する。期間中は、子供だけが買い物を楽しめる「オヒサマこども書店」や、クリエイターが選んだ「クリエイションのスイッチを押す一冊」が並ぶ、六本木未来会議「デザイン&アートの本棚」も登場。本イベントでしか味わうことのできない特別な体験を創出する。

また、会期中の10月17日・18日には、音楽・空間演出・ビジュアルが一体となったライブイベント「DESIGN LIVE MUSIC」を芝生広場で開催(終了)。川尻竜一や山口央らデザイナーが手がけたグラフィックを生かしたDJブースや演奏ブースが用意され、デザインと音楽が交錯する五感に響く空間が広がった。
まだまだ楽しめるコンテンツ・イベントが盛りだくさん
ほかにも、トークイベント「DESIGN LIVE TALK SALON」が10月24日・25日に開催される。第一線で活躍するクリエイターらが登壇し、デザインに込められた思考や制作プロセス、これからのデザインのあり方について深く掘り下げていく。

さらに今回のDESIGN LIVEでは、イベントをより楽しむためのオリジナルアイテム「“みつめる”シート」や「“みつめる”しおり」を展開。シートは芝生広場で無料貸出、しおりは館内インフォメーションカウンターにて配布されているため、ぜひ手にとって活用してみてほしい。


なお、館内では同時開催として「TOKYO MIDTOWN AWARD 2026 EXHIBITION」がプラザB1で実施されているほか、TOKYO MIDTOWN AWARD 2021 アートコンペ受賞者・柴田まおによるインスタレーション《Camouflage Prints》も「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE 2026」と「六本木アートナイト2026」との連携企画としてミッドタウン・ガーデンに展示されている。秋は東京ミッドタウンの街全体で、デザインの豊かな魅力とその可能性をぜひ体感してほしい。





















