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「竹久夢二 時代を創る表現者」(東京国立近代美術館)開幕レポート。過去最大規模の展示でひも解く「近代美術」を超えた創作世界
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第2章 夢二式のデザイン

 第2章「夢二式のデザイン」では、千代紙や便箋、手拭い、浴衣、書籍や楽譜の装幀に至るまで、鮮やかな色彩と大胆な構図で展開されたデザインワークに焦点を当てる。専門的な美術教育を受けず独学で表現を模索した夢二は、「デザインを通じて人々の暮らしを美しく豊かにする」という強い情熱を抱いていた。

第2章「夢二式のデザイン」の会場風景
「浴衣図案原画」の展示風景
夢二が手がけた本の装丁

 いまなお新鮮な驚きを与えるそれらのプロダクトからは、当時の流行を追っていた世代が夢二のデザインした小物をこぞって買い求めた様子が鮮明に想像できる。本の装丁においても卓越した手腕を発揮し、自身の著書55冊に加え、他者の書籍も約240冊手がけた。日本橋区呉服町(現・中央区八重洲一丁目)に開設した自著やデザイン小物を扱う「港屋絵草紙店」にまつわる資料や、当時のポピュラー音楽を彩った「セノオ楽譜」の表紙デザインも幅広く公開されている。

夢二が作成したスクラップブック

 独学ゆえに古今東西のあらゆる視覚文化からインスピレーションを得ていた夢二の思考は、夢二が残した膨大なスクラップブックから読み取ることができる。日常や旅先で集めた印刷物や、自作の切り抜き、西洋・東洋の美術品の複製図版などがびっしりと貼り込まれたこれらの資料は、夢二の創作の源泉を物語っている。

第3章 レトロモダンの創出

 第3章「レトロモダンの創出」では、急激な近代化の渦中で失われていく江戸への郷愁と、まだ見ぬ異国への憧れを、自身の表現のなかで昇華させた夢二の円熟期を取り上げる。子供向け雑誌や絵本の仕事、農村と港への郷愁を描いた掛軸や屛風、芝居を主題とした作品や自筆小説の挿絵など、レトロとモダンを自在に往還する表現が展開される。本章では、ベンチに身を預ける女性を描いた《秋のいこい》(1920)や、中国の歌曲をモチーフに、異国情緒とモダンな感性を凝縮させた《九連環》も紹介されている。なお《九連環》は約40年ぶりの出品となる。

竹久夢二《秋のいこい》(1920)紙本着色、屏風(二曲一隻) 150.8×163cm 夢二郷土美術館
竹久夢二《黒船屋》(1919)絹本着色、軸 130×50.6cm 竹久夢二伊香保記念館

 そして本展の大きな目玉と言えるのが、夢二の最高傑作と言われる《黒船屋》(1919)だ。東京では約40年ぶりの公開となる本作は、当時結核を患っていた恋人・彦乃への情愛を重ねて描かれたとされる。モダンな色彩感覚のなかに、日本の浮世絵と西洋近代絵画のエッセンスが融合した傑作だと評されている。

スクラップブック「きりはり帖」(大正期〜昭和初期) 金沢湯湧夢二館

 会場では《黒船屋》の着想源となったイメージソースもひも解かれている。黒猫を抱く女性のポーズは、夢二のスクラップブックにも収められているキース・ヴァン・ドンゲンの《黒猫を抱く女性》(1908)と酷似している。また、木箱に腰掛ける姿勢は、山村耕花による浮世絵風の挿絵《とらやのせいろ》(『読売新聞』1914年1月3日掲載、江戸時代の菓子屋・虎屋高林の井籠に座る女性を描いたもの)を参照した可能性が高いとされている。会場には夢二のスクラップブックも展示されており、これらのイメージソースと作品を見比べながら鑑賞できる。

編集部

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