写真、映像、言葉、多彩なメディアで語られるニュータウン
展示は2階へと続く。「とことこ調査団」は横浜市民ギャラリーあざみ野と近隣の山内小学校5年生が一緒に行っている学校連携の取り組みだ。子供たちがデジタルカメラを持って学校のまわりを歩き、写真を撮ったうちの1枚にタイトルをつけることで、街をよく見て人に伝えることを学ぶという試みだ。会場ではこの写真をまとめた『とことこ調査団 ZINE』を2年度分読むことができる。


川は写真家の荒川晋作と関川徳之により2016年に始まったプロジェクトで、スケートボードのライダーでもある2人が、全国の様々な場所で滑りながら、写真を撮り続けてきた。本展で展示されている写真からは、2人がライドするという観点で街をとらえ、身体をもって土地とコミュニケーションしてきた様子が伝わってくる。「滑る」という視点で街を見ることで、街の異なる表情に触れられることがわかる。
松田修は1979年兵庫県尼崎市生まれ。本展に出展されている映像作品《いるか》(2023)は、尼崎の風景と、水族館で芸をするイルカが、「いるか」という松田の声とともに交互に映し出される作品だ。「いるか」という言葉には「要るか?」という含意もある。映像に映る尼崎の風景は、制作されたのが3年前ながらもすでに再開発で姿を消していたといい、街が要不用の選別によって変化されていくことを伝えている。

第二次世界大戦時の空襲により壊滅しながらも、巨大なヤミ市場の形成や工業団地の建設によって復興を遂げた尼崎の街と、都心部で働く人々の居住地として農村部を開発してつくられたニュータウンのあざみ野とでは、まったく異なる歴史をもっている。しかし、松田が捉えた尼崎の街の変化のように、あざみ野もまた50年以上の歴史を経たことで「いるか?」の選別とともに再開発が行われつつある。そのときに失われるものと、発生するノスタルジーへの想像力が、このニュータウンで展示されているからこそ喚起される。

トランスフィールドスタジオは、2018年に東京で結成された山川陸と武田侑子によるユニットで、国内外の都市をリサーチし、参加者と街を歩く「ツアーパフォーマンス」をつくってきた。展示室にはオーディオガイドの音声、映像や写真、地図、テキスト、印刷物など、様々な媒体が展示室に点在しており、これまで各都市で同スタジオが行なってきた活動を知ることができる。また、それぞれの都市の固有性が浮かび上がるとともに、それぞれの都市の共通することと、異なることが見えてくる。場の固有性とはなにかを問いかける展示となっている。

展覧会の最後は、1972年愛知県生まれの谷山恭子のプロジェクト「街のはなし」で締めくくられる。現在はベルリンを拠点としている谷山だが、2014年から23年まで、あざみ野の隣駅である、たまプラーザ周辺でオーラル・ヒストリー・プロジェクトを展開していた。これは、園児から80代までの人々に街の好きな場所とその理由を尋ね、緯度経度とともにその語りを記録したもので、17年からは運営の主体を地域住民へと移し、住民の声によって「町史」を綴るプロジェクトへと発展している。
本展では、これまで主に文字のかたちで発表してきた「街のはなし」を、当時のインタビュー音声、映像、マッピング、サウンド・スカルプチャーによって再構成。とくにホーン状にしてマイクスタンドに取りつけられた「街のはなし」の紙面に近づくと、記録された住民の声が聞こえてくるようになっており、来場者が自ら聞き取りをしているような体験をすることができる。ニュータウンというかたちで数十年の歴史を重ねてきたこの街の姿を、日々を過ごしてきた住民の声によってとらえようとする試みだ。
戦後のニュータウン開発によって生まれた街も、すでに歴史の重層が生まれており、郊外で生まれ育った人々が育ち、自らのルーツとして振り返るようになり、街を個人史に絡めながら振り返るようになっている。あざみ野が位置する横浜市青葉区のみならず、ニュータウン世代が郊外ならではの土地性や歴史を各々の視点で定義しようとするとき、アートはどのような視座を提示できるのか。今後の参照項としても有効な展覧会となっている。



















