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「ニュータウン、インターフェアレンス 都市とわたしたちの関係」(横浜市民ギャラリーあざみ野)会場レポート。アーティストたちが捉え、考えたニュータウンの文化と歴史【2/3ページ】

ニュータウンの文化と歴史をアーティストの視点から捉える

 担当の北川は本展の企画意図について次のように語る。「本館のあるあざみ野は、東急田園都市線のニュータウン開発によって生まれた街で、駅の開業から50年を経てそれなりの歴史と文化が生まれてきた場所です。しかし、本館の企画展としては、この街を主題とした展覧会は開催されてきませんでした。改めて、ニュータウンの文化や歴史と人々との関係をアーティストたちの視点から問い直したいと考えました」。

 展覧会は1階の展示室から始まる。まず展示されているのは、赤田古墳群に関する出土品や写真といった資料だ。赤田古墳群とは、本館から300メートルほどの場所にある、5世紀末から7世紀にかけて築かれた4基の古墳と42基の横穴墓からなる古墳群だ。1980年代、この街の造成の家庭で発見されたこの古墳群は、「ニュータウン(新しい街)」がまったく新しい人間の営みとして現れたのではなく、断続的に、しかし確実に存在していたものであることを教えてくれる。

中島晴矢《バーリ・トゥード in ニュータウン》(2014)シングル・チャンネル・ビデオ 23分34秒。ニュータウンの公園でプロレスが繰り広げられる

 この街の近隣で生まれ育った1989年生まれの中島晴矢は、映像作品《バーリ・トゥード in ニュータウン》(2014)や《 バーリ・トゥード in ニュータウン ─ユートピア─》(2026)などを展示した。公園、道路、団地といったニュータウンのいたるところで、2人のレスラーがプロレスを繰り広げるという本作。計画的に整備されたニュータウンで、プロレスという生の身体がぶつかり合う過剰な行為を持ち込むことで、中島の整った故郷への愛憎と、そこからの逸脱を志向する「不似合いなもの」への憧れが見て取れる。

左から山口幸士《Untitled》(2026)リネンに油彩 27.3×19.0、《Untitled》(2026)リネンに油彩 19.0×27.3、《Untitled》(2026)リネンに油彩 19.0×27.3、《Untitled》(2026)リネンに油彩 27.3×19.0

 山口幸士は1982年川崎市生まれ。スケーターとして街をめぐっていたときの視点を軸に、油彩による風景画を描いている。本展ではフォーカスが合わないぼやけた風景を描いた32の絵画を展示。これらの作品に、どこかで見たことがあるような既視感を覚える鑑賞者も多いだろう。山や丘を切り崩し法面形成をしてつくられた土地、見た目が均一化された建売の住宅、規則正しく並ぶ街路樹といった、全国のニュータウンで見られそうな匿名的な風景が、個人的な思い出や感情を喚起させる装置となっている。

 1996年栃木市生まれで、写真や映像を中心に制作するアーティスト・石﨑朝子は、大型のインスタレーション《Transported scape》(2026)と、写真や映像を組み合わせたインスタレーションを展開した。石﨑は本展のためのリサーチにおいて、同館から500メートルほどの場所にある「大場かやの木公園」にあるカヤの木に着目した。このカヤの木はニュータウン開発の際に公園に移植された樹齢600年を超えるとされる巨木だが、衰弱してしまったために周囲に鉄骨と防風ネットが組まれて養生されることになった。

石﨑朝子《Transported scape》(2026)水性樹脂、アルミ、スリング、ビデオ 手前の映像が「大場かやの木公園」にあるカヤの木を映す映像、奥が木の断面をモチーフにした立体

 石﨑はこの巨木の断面の形状を、輪のような立体作品にして天井から吊るした。作品を吊り下げるのはクレーン作業で使用されるスリングであり、カヤの木が極めて人工的な装置によって保全されていることと呼応している。また、木のかたちに切り抜いた枠を通して夜のニュータウンを歩き回る映像作品もともに展示されており、カシの木を守りたいという人間の思いと、その思いが極めて工業的な方法で成り立つという不思議さを同居させる。住民のカシの木保存への思いは、ニュータウン開発という人間の行為への後ろめたさの裏返しなのかもしれない。

左から石﨑朝子+加藤広太《City Statement》(2024)写真、消しゴム、《Voice Cleaning》(2024)マルチチャンネルビデオ

 また、石﨑が加藤広太とともに制作した《Voice Cleaning》(2024)も、街の変化を扱った作品だ。横浜・桜木町エリアに多く描かれていたグラフィティが、環境整備としてに清掃され消されていく様を、白い布で街の汚れを落とすという行為を記録する複数の映像によって再定義した。

編集部