約15万点、2年がかりの移転
所蔵作品をマッシーへ移すには、約2年と大型トラック約645台分の輸送が見込まれている。作品管理部門を率いるラファエル・ボームによれば、作品管理、学芸、保存・修復など約10の部門が連携し、移転専任のチームも編成された。搬入口には大型トラック4台が同時に入ることができ、作品は一方向に流れる動線に沿って受け入れられる。梱包を解いて状態を調査し、必要に応じて検疫や害虫処理を経て収蔵庫へと運ぶ。
収蔵庫は作品の大きさや性質に応じて配置され、大型・重量作品は地上階、小型の素描などは上階に収められる。2トンにおよぶ作品にも対応し、温湿度管理や低温保存を要する素材のための専用室も設けられた。作品を実際に組み立て、状態を確認しながら展示方法を検討する「仮組み」の空間もあり、大型作品や複雑なインスタレーションの調査、修復、展示準備を可能とする。
保存・修復工房は6室。彫刻などの立体作品、建築・デザイン、映像、絵画、素描、写真まで、分野ごとに作業場所が分かれている。修復担当者10人を中心に、予防保存や科学的分析を担う専門職も加わる体制へと拡充される計画だ。彫刻工房には溶剤の蒸気を排出する吸引設備も設置されている。作品の素材や損傷の状態を調べ、必要な処置を判断する。保管から修復、梱包、輸送準備までを同じ施設内で連携させ、作品を長期的に守る体制を整える。

公立美術館と地域との新たな接点
パリ本館が大規模改修による閉館中も、国内外のパートナー施設で展示事業等を続けるいっぽう、マッシーではコレクションを守り、地域との関係を育てる新たな拠点づくりが進む。文化施設がパリ中心部に集中するなか、郊外に拠点を設けることは、収蔵スペースの確保にとどまらず、地域の文化的な選択肢を広げ、これまで美術館との接点が限られていた人々にコレクションを届ける試みでもある。ポンピドゥー・フランシリアンのディレクターに就任したアレクシア・ファーブルは、直近ではボザール・ド・パリ初の女性校長を務め、それ以前には、パリ郊外初の現代美術館とされるヴァル=ド=マルヌ現代美術館(MAC VAL)の創設に携わり、開館後は館長を務めた人物だ。
また、マッシー市周辺のパリ・サクレー地域には大学や高等研究機関が集まり、科学技術を軸に、教育・研究機関と産業界の協力関係が築かれてきた。ポンピドゥー・フランシリアンの建設にかかる投資総額は1億500万ユーロ(約186億2000万円)で、イル=ド=フランス地域圏、エソンヌ県、パリ・サクレー都市圏共同体、マッシー市などの自治体が計4200万ユーロを負担する。こうした公的な支援は、同施設を地域の文化基盤として位置づけるものでもある。大学・研究機関との協力は、地域との関係を育むとともに、作品の保存・修復に関する専門知を深める機会にもなりうる。
正式開館に先立ち、施設では無料のプレオープンイベント「Prélude !」を開催している。10月17〜18日に続き、24〜25日、31日〜11月1日にも、建築、地域、自然、共同作業をテーマに、パフォーマンスやトーク、ワークショップ、コンサートなどが行われる。正式開館は2027年春を予定している。

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