《班猫》《裸婦図》──「ベスト」と呼ぶにふさわしい近代日本画
本展の大きな見どころとなるのが、山種美術館を代表する2点の重要文化財だ。
そのひとつが、竹内栖鳳の《班猫》(1924)。柔らかな毛並みと印象的なエメラルドグリーンの瞳を持つ猫を描いた、栖鳳の動物画を代表する作品であり、いまや同館の「看板猫」とも言える存在だ。

本作には、栖鳳が沼津の八百屋で見かけた猫を気に入り、譲り受けて京都の自宅まで連れ帰り、ポーズをとらせて描いたというエピソードが残されている。入念な写生を重ね、金泥を用いた繊細な毛描きによって表現された猫の毛並みは見事というほかない。美術史家で同館芸術顧問を務める山下裕二が「最高の猫」と評するのもうなずける一作だ。
もうひとつの重要文化財が、村上華岳《裸婦図》(1920)である。本作に描かれるのは、華岳が「永遠の憧憬の源で、理想の典型」とした「久遠の女性」だ。アジャンター石窟の菩薩像やレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》を思わせる神秘的な風貌を持ついっぽう、実在の人物から着想を得た可能性も指摘されている。現実の女性像と理想化された聖性が重なり合う、独特の存在感を放つ作品だ。

このほかにも、上村松園《蛍》(1913)、川端龍子《鳴門》(1929)、土田麦僊《大原女》、福田平八郎《筍》、速水御舟《昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯》(1926)など、近代日本画を彩る名品が並ぶ。その顔ぶれは、まさに「ベスト・オブ」の名にふさわしい。
なかでも強い存在感を放つのが、川端龍子の《鳴門》だ。横長の大画面いっぱいに、鳴門海峡の激しい渦潮をダイナミックに描き出した本作は、龍子が自ら設立した青龍社の第1回展に出品した大作である。約3.6キロもの群青を使用したという画面には、荒々しい波の動きや水の勢いが鮮烈に表現されており、龍子が追求したスケールの大きな日本画表現を体感することができる。




















