美術館の誕生を物語る、横山大観《心神》
いっぽう、本展をたんなる「名品選」とは異なるものにしているのが、山種美術館の歴史そのものと深く結びついた作品群だ。
横山大観《心神》(1952)は、その代表格と言える。同作は、種二が長年の夢であった美術館の設立を決意した際、特別に購入を許された作品だという。

描かれているのは、雲の上に雄大な姿を現す富士山。簡潔な構図のなかに堂々たる山容を浮かび上がらせた本作は、大観が生涯にわたって取り組んだ富士山という主題を示すと同時に、山種美術館の誕生を象徴する一点でもある。
また、小林古径の《清姫》(1930)にも注目したい。安珍・清姫伝説を題材とする連作で、本展ではそのうち「日高川」などが展示される。本作は再興第17回院展で発表され、好評を博した作品だ。その後も古径自身の手元に置かれていたが、種二が美術館を設立することを条件に購入を許されたという。ここにも、画家とコレクターの信頼関係がうかがえる。

《心神》や《清姫》に共通するのは、個人の収集という枠を超え、美術館を設立して作品を後世に伝えようとする種二の意思が、その収蔵の背景にあったことだ。
約40点の作品で構成される本展では、近代日本画の名品を鑑賞するだけでなく、それらがどのような経緯で山種コレクションに加わったのかという歴史にも目を向けたい。ひとりのコレクターの審美眼と近代日本画の歩みが重なり合うところに、本展ならではの面白さがある。



















