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「ルーヴル美術館展 ルネサンス」(国立新美術館)開幕レポート。ルーヴル所蔵のレオナルド作品が初来日、《モナ・リザ》以来52年ぶり【2/3ページ】

「横のつながり」からルネサンスを見る

 こうした展覧会の狙いを具体化するのが、「旅」「技法の革新と洗練」「古代へのまなざし」「肖像芸術の隆盛」という4つのテーマだ。

 本展の日本側監修者である国立新美術館主任研究員の宮島綾子は、ルーヴル美術館を含む西洋の美術館の常設展示では、作品は国や地域、ジャンルごとに分けられ、年代順に紹介されることが多いと指摘する。そこでは美術史を「縦」にたどることができるいっぽう、見えにくくなるのが、地域やジャンルを越えた「横のつながり」だという。ルネサンス期には絵画や彫刻、版画、工芸が互いに影響を与え、人や物とともに技術や表現、図像がヨーロッパ各地を移動した。本展は国やジャンルによる区分を横断することで、そうしたネットワークを浮かび上がらせようとする。

ヴェネツィアの画家《ヴェネツィア共和国の使節団を迎えるダマスクス総督》(1511頃)キャンバスに油彩 120×204.5cm パリ、ルーヴル美術館
左からエル・グレコ《アントニオ・デ・コバルビアス・イ・レイバ(1524–1602年)の肖像》(1597–1600頃)、ヤン・ファン・スコーレル《32歳の男性の肖像》(1521)

 第1章「旅」が焦点を当てるのは、こうした人と物の移動だ。芸術家たちは新天地を求めて各地を旅し、宮廷や都市を移動するなかで新たな技法や表現に出会った。そうした移動が文化的交流を促し、それぞれの土地で新しい表現を生み出していく。

第2章「技法の革新と洗練」の展示風景より、素描や版画、マジョリカ陶器、ブロンズ彫刻、エナメルなどが紹介されている
第2章「技法の革新と洗練」の展示風景より

 続く第2章「技法の革新と洗練」では、素描や版画、マジョリカ陶器、ブロンズ彫刻、エナメルなど、ルネサンス期に発展・成熟した多様な技法を紹介する。

 なかでも宮島が注目するのが版画だ。ひとつの原版から複数のイメージを生み出せる版画は、図像やモチーフをヨーロッパ各地へと伝播させる役割を担った。同じモチーフが絵画だけでなく陶器やエナメルなど異なる媒体へと転用されていく様子を、実際の作品を比較しながら確認できる。また、古代ギリシャ・ローマで発達し、中世には衰退したブロンズ鋳造がルネサンス期に復興し、その技術が別の工芸分野へ応用されていく過程にも目を向ける。

第3章「古代へのまなざし」の展示風景より
サンドロ・ボッティチェリ《5人の天使に囲まれる聖母子》(1470頃)板(ポプラ)にテンペラ 58.5×40.7cm パリ、ルーヴル美術館

 第3章「古代へのまなざし」のキーワードは、ルネサンスの語源にもつながる「再生」。古代ギリシャ・ローマの彫刻や建築、遺物への関心が高まるなか、芸術家たちは古代の造形を学び、それを新たな表現へと転換していった。

 そして第4章「肖像芸術の隆盛」では、人間そのものへの関心の高まりに注目する。人文主義の広がりとともに、一人ひとりを固有の個性を持つ存在としてとらえる意識が強まり、肖像芸術も発展。貴族や権力者だけでなく、市民や子供へと描かれる対象が広がったほか、横顔、四分の三正面像、肖像メダル、大理石彫刻など、様々な形式と素材によって人間の姿が表現された。

左からバルトロメウス・ブロイン(父)《ケルンの商人で同市参事会員フィリップ・フォン・ガイル(1496-1558年)と5人の息子の肖像》、《カタリーナ・フォン・ガイル(旧姓フォン・ミュルハイム、1540年没)と二人の娘の肖像》(いずれも1536-37頃(?)/額に記された年:1545)

編集部