暗雲の時代を生き抜いた作家たちの痕跡
第5章「描いた/描かせたのは誰か」では、戦時体制へと組み込まれていった美術や文学などの表現にせまる。

当時、日本国内では戦争画の制作や国策協力を目的とした文学活動が命じられ、多くの芸術家・文学者が戦意高揚の施策に巻き込まれた。日本の統治下にあった台湾も例外ではない。展示作品からは、国家の制度への応答と、個人の葛藤とのはざまで揺れ動く痕跡がにじみ出る。本章では、そうした極限状態のなかで作家たちがどのような選択をし、表現を続けようとしたのかに焦点を当てる。



長い廊下を通り抜けてたどり着く最終章「長い白夜」は、台湾と日本が迎えたそれぞれの戦後を取り上げる。日本では敗戦後の厳しい状況下にありながらも、芸術や文学の再興に向けた活気が戻りつつあった。いっぽう、日本統治が終了し中華民国による施政下に入った台湾では、1947年の「二・二八事件」をきっかけに多くの市民や芸術家が弾圧・処刑され、再び暗い時代へと突入する。
本章では、こうした時代の空気が個々の営みに与えた影響と、その多様な表れ方に焦点を当てる。厳しい時代にありながらも続けられた弛まぬ表現活動とはどのようなものであったのか、この機会に学んでみてほしい。


本展は2019年に国立台湾美術館で行われた「共時的星叢 : 〈風車詩社〉與跨界域藝術時代」展を東京で再構築したものだが、それはたんなる巡回展に留まらない。風車詩社の活動を通じて台湾文化への理解を深めてきた黄が、膨大なリサーチと日本チームとの綿密な対話を経て、自国の多層的な文化をいかに海外へ伝えるかを追求した成果と言えるだろう。
黄は本展を通じ、西洋的な枠組みによる一方向的な視点を解体し、「作家本人に立ち戻ること」「作家の命の痕跡に触れること」を重視したと語る。
夜空に1つの星を見つけたとき、我々は周囲の星々と結びつけることで「星座」を描き出す。展示室を巡る観客もまた、かつて台湾と日本を生きた作家たちの個々の営みを線で結び合わせ、自分だけの「星叢」を見出すことになるだろう。



















