地下展示室──精神宇宙と最新作《LUNATION》
白を基調とした明るい空間のなかで、天体や自然との関係性を捉えた作品が展開されている地上階に対し、地下展示室は一転して深遠な雰囲気を纏う。

その入り口には、瀧本の原点とも言える11歳のときに撮影した写真が紹介されている。幼少期から天体や遺跡に心を寄せ、自作の赤道儀(地球の自転に合わせてカメラや望遠鏡を動かし、星を追いながら撮影するための装置)で天体の動きを撮影していた原体験が、現在の光や時間の流れを追い求める姿勢へとつながっていることがうかがえる。
これまで天体や宇宙そのものに惹かれていた瀧本だが、コロナ禍を経て、その表現はより内面的な「精神宇宙」へと向かっていく。地下の展示空間では、そうした思考の深化とともに生まれた近年の作品群が紹介されている。

《LUMIÈRE》(2024)は、コロナ禍において自主隔離期間中の散歩で菜の花に出会ったことを機に生まれたシリーズだ。世界が混乱するなかで、変わらずそこに咲き続ける花に魅了された瀧本は、これまで空が入らないよう高い場所から見下ろす画角での撮影を試みてきたが、本シリーズはあえて下から太陽を仰ぐ画角で撮影。地上から自然光が降り注ぐ、地下の展示空間とも調和している。

そして本展のハイライトとなるのが、暗がりのなかに展示された最新作《LUNATION》(2026)だ。夜の茅ヶ崎の海を捉えた本作は、波が引いた砂浜に輝く月光を写し出している。月光が地球へ届く約1.3秒を露光時間に設定し、月光が海面に触れて消えるまでのプロセスをイメージとして定着させた。波打ち際に浮かび上がる光は、まるで銀河のようにも見える。


会場奥には茶室を模した空間が広がり、月光の写真が軸装された掛け軸や、平安後期の経筒外容器に瀧本自身の言葉を収めたインスタレーションが並ぶ。望遠鏡を覗き込むような鑑賞体験は、11歳の瀧本のまなざしを想起させる。
光や天体、そして自然に関心を寄せてきた瀧本。本展は、幼少期の原体験を根底に持ちながら、時代や環境の変化とともに独自の表現を深めてきたその足跡を、空間とともに体感できる機会となっている。
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