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「蒐集がアートになるとき」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)レポート。「民具」はいかにして現代美術と交差するのか【3/3ページ】

油谷満夫の人物像と、過ごしてきた時間や場所にもせまる

 ギャラリー中央で存在感を放つ垂れ幕は、アウト・オブ・民藝(軸原ヨウスケ、中村裕太)による《アウト・オブ・民藝のユートピアだより|油谷満夫の蒐集曼荼羅》(2026)だ。「民藝」の周辺をリサーチするふたりは、2020年に秋田のギャラリーBIYONG POINTで展覧会を開催した際に、油谷と出会ったという。

奥は《アウト・オブ・民藝のユートピアだより|油谷満夫の蒐集曼荼羅》(2026)

 本展に向けて油谷の自宅で行われたインタビューの音声を、会場のQRコードから聴くことができる。前後編で1時間ほどあるのだが、その声と人生観に耳を傾けながら、油谷が掲げる《人生観図》(1985)や会場に並ぶ品々を読み解くこともおすすめしたい。

山岸耕輔・瀬戸彩花の《めまいのなかに - 秋ノ宮倉庫 - 》(2026)
イタイミナコによるパフォーマンス映像《てどり》(2026)。周辺に置かれるのは、油谷コレクションを保管している段ボールの数々

 会場奥では、油谷の倉庫を映像と3Dデータで記録した山岸耕輔・瀬戸彩花による《めまいのなかに - 秋ノ宮倉庫 - 》(2026)が上映されている。さらに興味深いのは、参加作家のなかで唯一油谷との接点がなかった美術家・イタイミナコの試みだ。イタイは、油谷との対話や蒐集活動の様子を「自らの身体に憑依させて再現する」パフォーマンス映像を発表。他者を自身の身体に落とし込む独特のコミュニケーションを通じ、油谷の活動を丁寧に咀嚼しようとする姿勢が伝わってくる。

民具ラボの活動に携わる國政サトシによる《生活業》(2026)。食品や日用品の包装を用いて半纏を制作した
内田聖良は、民具ラボと油谷の活動をもとに物語《バーチャル民具講》(2026)を制作した。鑑賞者はQRコードより「バーチャル民具」を持ち帰ることができる

 会場にはこのほかにも、各作家がそれぞれの視点から油谷の足跡とコレクションを受け止め、新たな表現へと昇華させた思考の痕跡が並ぶ。

 戦前に生まれ、激動の消費社会を生き抜いてきた油谷満夫の蒐集活動は、庶民の生活史の記録でもある。「もの」そのものの雄弁さを大切にする油谷のコレクションには、いまだ解き明かされていない豊かな「余白」が残されているとも感じられる。それらの余白がアートと出会ったとき、どんな新しい視点が生まれるのか。本展を起点として、今後さらなる展開が広がっていくことに期待したい。

 なお、会期中にはワークショップや油谷本人によるトークイベントも実施されるため、参加の際はギャラリーのウェブサイトよりチェックしてほしい。