「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」が練馬区立美術館で開催。現代美術家・ユアサエボシの作品を通して、戦後日本の前衛芸術をひも解く

東京・中村橋の練馬区立美術館にて、現代美術家・ユアサエボシと、戦後日本の前衛芸術を切り開いた美術家たちの作品を読み解く展覧会「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」が開催される。会期は10月31日〜12月27日。

ユアサエボシ《傀儡(くぐつ)の王》(2026) キャンバスにアクリル 作家蔵

 東京・中村橋の練馬区立美術館にて、現代美術家・ユアサエボシと、戦後日本の前衛芸術を切り開いた美術家たちの作品を読み解く展覧会「ユアサエボシと戦後アヴァンギャルドの変身寓話集」が開催される。会期は10月31日〜12月27日。

 ユアサエボシ(1983〜)は、旧来の雑誌やインターネット上のイメージを組み合わせた絵画制作にとどまらず、「大正生まれの架空の三流画家 ユアサヱボシ」(1924〜1987)という人物像とその生涯の物語を創作して発表を続けるアーティストだ。自らを「擬態派」と名乗り、架空の物故画家の設定をまとうことで現代と戦後を往還してきたユアサは、本展にて同館の収蔵作家から着想を得た新作絵画を発表。作品に付随する「ヱボシ」の年譜や新たな物語も会場で明かされる。また特別協力として、小説家の小川哲が架空の詩人としてユアサの作品に影響を与えた詩を寄せる。

館蔵品を現代美術と織り交ぜながら再定義する

 本展は2部構成、さらに1部と2部のあいだに設ける小特集「変身広場」でも作品が展開される。第1部「戦後アヴァンギャルド」では、同館の収蔵作家である池田龍雄、高山良策、中村宏に焦点を当てる。

高山良策《人形》(制作年不詳)紙、針金、紙粘土ほか 練馬区立美術館
池田龍雄《賑やかな人々》(1956)キャンバスに油彩 練馬区立美術館
中村宏《似而非機械》(1971)キャンバスに油彩 練馬区立美術館

 特攻隊の訓練中に終戦を迎え、変質する人間像を緻密なペン画で問うた池田、出征体験を経て都市の機械性や民俗的・エロティックなイメージを複雑に交錯させた高山、セーラー服の女学生と軍事機械のイメージを融合させた中村などを、収蔵後初公開となる作品や資料を交えて紹介する。

 第2部ではユアサエボシを特集。ユアサは絵画制作のプロセスのなかで事後的に過去や歴史とのつながりを見出し、架空の人物「ユアサヱボシ」とその生涯の物語と結びつけていく手法をとる。

ユアサエボシ《理想社会》(2018)キャンバスにアクリル  個人蔵

 その制作方法は、作品の多義性やあり得たかもしれない過去への想像力を喚起させるものだ。「ヱボシ」の設定を用いることで、戦後美術を担った作家たちと疑似的に同時代を生き、制作することを試みるユアサの活動を紹介する。

 さらに「変身広場」と題した空間では、岡本太郎、桂ゆき、鶴岡政男、古沢岩美、芥川(間所)紗織、山下菊二を紹介。異形のモチーフや仮面、歪められた身体表象など、戦後美術における「変身」のモチーフの広がりを1部と2部のつながりのなかで紹介する。

芥川(間所)紗織《女Ⅲ》(1954)綿布に染色 板橋区立美術館
鶴岡政男《物乞う人(辻楽師)》(1950)キャンバスに油彩 練馬区立美術館
古沢岩美 《日本の70年(コウモリ・男の顔)》 (1988-98)キャンバスに油彩 練馬区立美術館

   戦中・戦後の急激な社会変動のなかで、傷ついた人間身体や怪物といった「変身」のイメージを介して現実を観察した作家たち。その寓話的な視線と、現代から過去へと潜行するユアサエボシの手法が交差する、交感と対話の場となりそうだ。

編集部