工藤桃子が手がけた、「残す」ためのリニューアル
リニューアルの核となる理念は、「作品と深く呼吸する場所」の提供だ。
浅間山の裾野に広がる自然や光に包まれながら、作品とゆっくり向き合う。そうした時間を育み、「カジュアルでありながら上質な居場所」をつくることを目指したという。作品が投げかける問いや、そこから立ち現れる情景に触れることで、人々の感受性を呼び覚まし、自らの感性で世界と向き合う「シトワイヤン」(仏語で「市民」の意)を育む場として位置づけられている。
今回の改修で重視されたのは、菊竹による建築、若林が構想した庭園、そして現代美術のコレクションを個別に扱うのではなく、三者が響き合う環境そのものを見つめ直すことだった。「作品・自然・建築」の関係性を、これまで以上に深く体感できる美術館へと更新することが、その中心にある。
リニューアル設計を担当したのは、建築家の工藤桃子(MMA Inc.)。工藤が今回の改修で重視したのは、新しい要素を加えること以上に、「何を残すか」という視点だったという。

菊竹建築の特徴を伝える照明やドアノブなどは、安易に交換することなく従来のものを残した。いっぽう、エントランスでは機能や動線を整理し、後年に加えられた不要な要素を取り除くことで、建築本来の輪郭を浮かび上がらせている。




















