豊かな自然に囲まれながら現代美術を堪能できるセゾン現代美術館。1981年、軽井沢に開館し、20世紀初頭の巨匠から今日の作家まで国内外の現代美術のコレクションを約500点有する。所蔵作品は年に2回の企画展の際に展示替えするほか、アンゼルム・キーファーのインスタレーションやジャン・ティンゲリーなどの大型作品を常設展示してい る。また建築家・菊竹清訓の設計した建物を、彫刻家・若林奮の構想した庭園が囲み、小川の流れる緑豊かな庭を回遊しながら数々の野外彫刻を見ることができる。
現在開催中の企画展は、小野耕石と門田光雅による2人展「The ENGINE 遊動される脳ミソ」だ。独自の手法で版画・絵画のあり方を探る両者の作品は、身体的に生み出された色と光が共通する要素だが、本展は作者の意図を超えた「自身を突き動かすものとは何か」をテーマに構成されている。何十回とインクを重ね刷りあげられる小野の版画や立体作品と、様々な手法で絵具を塗り重ねた門田の絵画。両者の「色」を手掛かりに、ジャスパー・ジョーンズ、加納光於、アンディ・ウォーホルなどのコレクションを織り交ぜて展示している。
思考よりも先に身体が動いてしまうとき、そのエネルギーを発動させる正体とは何か。その答えを、作品の持つ色と光に委ねてみたい。
学芸員・坂本里英子に聞くみどころ
本展は同世代の2作家の近作を中心に構成し、作品をつくる原動力とは何か、という問いをテーマにしています。初披露となるのは、小野さんが当館のコミッションワークとして新たな表現方法で制作した《Looprint》、そして幅5メートルほどもある門田さんの新作《Clock》です。そのほか大型の近作等、両作家とも美術館では過去最大の規模で展示しています。また企画展とコレクションを組み合わせて展示するのも、近年の新たな試みです。