第3章「世紀を超えるインパクト─19-20世紀」
第3章「世紀を超えるインパクト─19-20世紀」では、19〜20世紀における、レンブラントの銅版画の影響を知ることができる章だ。

レンブラントの銅版画があまり知られてこなかったスペインでは、フランシスコ・デ・ゴヤ(1746〜1828)が知人のコレクションなどに含まれていたレンブラントのエッチングを研究し、自身の版画作品に反映させていった。

また、19世紀のフランスでもエッチングが高く評価されるようになる。エングレービングのようなイメージの複製とは異なり、自由度の高い線描の表現が可能なエッチングは、作家性を発揮できる表現として再発見された。1862年、「芸術としてのエッチングの普及」を目的として、パリにて「腐蝕銅版画家協会」が設立。協会と、協会を支持するフランスの批評家たちは、レンブラントを「芸術としてのエッチング」を象徴する存在として評価し、そのエッチングの表現の豊かさや、刷りまでの工程を自らが担ってその芸術性を追求する姿勢がひとつの目標とされた。


レンブラントが1652年頃に制作した《書斎の学者(ファウスト)》は、主題に見られる幻影や、添えられた意味深長なテキストなどから、世紀をまたいで様々に解釈され、人々の想像力を掻き立ててきた作品だ。例えば18世紀にはヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749〜1832)が本作を所有しており、戯曲『ファウスト』(1808)の着想源にもなった。さらに19世紀以降も、エッチングの再評価とともに多くの人に愛好される作品であり続けた。

続く20世紀になっても、レンブラントの版画はアンリ・マティス(1869〜1954)、パブロ・ピカソ(1881〜1973)、アルベルト・ジャコメッティ(1901〜66)といった芸術家たちに影響を与え、模写されたり、作品の着想源になっていった。
本展の魅力は、レンブラントという著名な画家が版画に傾けた情熱を知ることができるだけではない。その創作を受容する風土を育んだ17世紀オランダの社会や、銅版画の可能性を信じた作家たちの創意工夫などが、豊富な作品群から読み取れる。版画というメディアが持っていた可能性を改めて教えてくれる機械であるとともに、今後の版画の見方に新たな射程を与える展覧会と言えるだろう。



















