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「三島由紀夫ーピエル・パオロ・パゾリーニ 対峙の手がかり 沈黙せず、目をそらさずに」(イタリア文化会館)開幕レポート。ふたつの軌跡の交錯を見る

東京・九段下のイタリア文化会館 エキジビションホールで、展覧会「三島由紀夫ーピエル・パオロ・パゾリーニ 対峙の手がかり 沈黙せず、目をそらさずに」が開幕した。会期は7月29日まで。会場の様子をレポートする。

文:大原愛美(編集部)

左は篠山紀信《三島由紀夫の家》(1970)、右がサンドロ・ベッケッティ《書籍『グラムシの灰』を持つパゾリーニのポートレート》 ©ベッケッティ・コレクション

 東京・九段下のイタリア文化会館 エキジビションホールで、「三島由紀夫 ― ピエル・パオロ・パゾリーニ:対峙の手がかり 沈黙せず、目をそらさずに」が開幕した。会期は7月29日まで。

 本展は文学者・三島由紀夫と映画監督・ピエル・パオロ・パゾリーニを対話的に提示するもの。イタリア文化省、ローマ国立近代美術館、SUAZES、およびイタリア文化会館が主催し、準備にはおよそ3年の期間が費やされた

 本展は「肉体」「責任」「文学」「映画」「劇場」「芸術連関」「社会」という7つのキーワードを軸に、両者の知的・芸術的活動を、並行するふたつの軌跡として提示している。

異なる背景を持つふたりの時代への眼差し

 駐日イタリア大使のマリオ・アンドレア・ヴァッターニは、三島とパゾリーニは「人物としてそれぞれ異なる思想を持つ」と前置きしたうえで「両者には時代を批判的に捉えていたという共通点があり、両者を比較することに意義がある」と語った。また、イタリア文化会館館長代理のルカ・マリーニは、本展が日本とイタリアの外交関係樹立160周年を記念するものであることに触れ、1866年の修好通商条約締結による国交樹立から続く日伊の関係を祝福する催しであると述べた。

順路なき空間が促す、来場者との対話

 本展では篠山紀信(1940〜2024)や土門拳(1909〜90)といった写真家たちによる、三島とパゾリーニの写真が多数展示されており、その表情や仕草からふたりの思考に近づくことができる。また、会場には決まった順路が設けられておらず、来場者は展示空間を自由に歩き回り、多角的な視点で両者の作品や資料を比較することができる。

三島由紀夫に関するアーカイブ資料 書籍や直筆の原稿などで構成されている
左はミンモ・カッタリーニク《映画「カンタベリー物語」におけるジェフリー・クーシェ役のパゾリーニ》(1972) ©ミンモ・カッタリーニク文化協会 右が市川崑監督による映画《炎上》(1958)のポスター資料

 アーカイブ資料や初期作品、直筆の原稿などで構成された展示空間には、それぞれの代表的な仕事の資料の数々が並ぶ。三島由紀夫の文学作品の直筆原稿や、『金閣寺』(1956)を実写化した市川崑監督による映画『炎上』(1958)のポスター資料も紹介されている。

ピエル・パオロ・パゾリーニに関するアーカイブ資料 自身の監督映画《デカメロン》(1971)の広報ビジュアルや、撮影現場でのスナップ写真などが並ぶ
左は篠山紀信《三島由紀夫の家》(1970)、右がサンドロ・ベッケッティ《書籍『グラムシの灰』を持つパゾリーニのポートレート》 ©ベッケッティ・コレクション

 対するパゾリーニ側には、監督映画《デカメロン》(1971)や《ソドムの市》(1975)の広報ビジュアルや、撮影現場でのスナップ写真が並置されている。 

若者へ向けられた、沈黙しないためのメッセージ

 本展企画者であるマルコ・ミヌッツは、それぞれの創作活動を多面的に展示することで、来場者がふたりの共通点だけでなく、緊張関係をも知ることができると説明した。

開会式より 左:マルコ・ミヌッツ(本展企画者 / SUAZES CEO)、右:佐藤秀明(三島由紀夫展示担当キュレーター / 三島由紀夫文学館館長)

 ミヌッツは挨拶のなかで、イタリアのジャーナリスト・作家であるオリアナ・ファラーチ(1929〜2006)の言葉「たとえ苦痛であっても誠実であること。残酷だと受け取られることがあっても、正直であること。そして、不都合であろうと、衝撃的であろうと、危険であろうと、自らが信じることを語る勇気を持つこと」を引用。この言葉が本展を通してとりわけ若い世代の鑑賞者に届けたいメッセージであると強調した。

 実際に出会うことのなかったふたりの人物は、それぞれの時代の矛盾を明晰に見据え、沈黙することなく、目を逸らさずに発し続けた。ふたりが発し続けた言葉や表現は、鑑賞者の思考を揺さぶり、現代を見つめ直すための道標となるだろう。

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