神奈川県葉山町の神奈川県立近代美術館 葉山で企画展「もはやない国のかつてない光 東ドイツの女性写真家たち」が開幕した。会期は8月30日まで。担当は同館学芸員の三本松倫代。

本展は東ドイツの15人の女性写真家によるヴィンテージプリントなどを作家ごとに展示することで、それぞれの個性や問題意識を明確に浮かび上がらせるものとなっている。労働者、家族、若者文化、ファッション、身体表現──同じ東ドイツを生きながら、その視線は驚くほどに多様であることがわかる。

「知られざる女性写真家たち」では終わらない
本展の意義は、東ドイツの女性写真家を紹介することだけではない。日本で戦後ドイツ写真が紹介される際、その中心にあったのはベルント&ヒラ・ベッヒャーに連なるデュッセルドルフ派をはじめとする西ドイツの系譜だった。いっぽうで東ドイツの写真家、とりわけ女性写真家たちは長らく写真史の周縁に置かれてきた。だが会場で作品を見てまず驚かされるのは、西ドイツのそれに匹敵する完成度の高い表現だ。デジタル補正も高度な編集環境も存在しなかった時代に撮影された写真は、構図、光、タイミングのいずれも緻密に計算されている。写真史を補完する展示という以上に、一群の優れた写真としての見ごたえも感じられる。


当時の社会主義体制下の東ドイツでは女性の就労が積極的に推進され、写真の世界も例外ではなかった。ファッション誌の撮影、工場取材、報道写真、行政からの委託撮影など、その仕事の延長線上で、多くの女性たちが自らの表現を育てていった。
なかでも興味深いのは、職業写真と作家活動が明確に分離していなかった点だ。ときに対立的に語られることもある「仕事」と「創作」は、東ドイツではひと続きのものとして存在していた。そのことは、会場に並ぶ作品からも感じ取れる。ブリキッテ・フォイクト(1934〜2025)は居酒屋や縫製工場など様々な場所で働く女性のポートレイトを、ウーテ・マーラー(1949〜)は創作性の高いファッション写真を撮影した。社会を記録する視線と個人的な関心とが自然に交差し、それが写真表現として結実している。






































