──NANZUKA(東京・渋谷)で開催された「女優はマシーンではありません。でも機械のように扱われます。」展では、マリリン・モンローをモチーフにしたペインティングに加え、等身大や1/3スケールの立体作品が展示されていました。「セクシーロボット」シリーズの流れを汲みつつ、こういった新しい表現を試みた背景を教えていただけますか?
もともとモンローが大好きで、よく描いてはいたんです。個展に向けて、ギャラリーからはロボットを描いてほしいと言われていたのですが、知人に「モンローにはもう肖像権がない」という情報を教えてもらい、いい機会だと思って発表することにしました。
展覧会タイトルにもなった「女優はマシーンではありません。でも機械のように扱われます。」というのは、実際にモンローが発言した言葉です。彼女は生前批判の対象となることも多く、自分の境遇に対してそういうセリフを言ったらしいのです。
「セクシーロボット」に通じるようなモンローの言葉がないかと調べていたらこの発言に出会ったので、ぴったりだなと思いタイトルにしました。なので先日の個展は、モンローの言葉をそのまま描いた、というところでしょうか。
──モンローの特徴的な表情や仕草と、「セクシーロボット」の金属的な質感が見事に同居しているので、驚きました。
私にとって「びっくりさせる」というのは、作品づくりの基本なんです。いちばんわかりやすい方法だと、テクニックでびっくりさせる、というのがあります。私の写実的なイラストを見た多くの人は、「写真みたいですごい!」と言って驚きます。一般の人が相手だと、びっくりさせるのがすごくラクなんです。
でも私は、思想や宗教におけるタブーのように、根源的なものを逆撫ですることによってびっくりさせたい。モンローの作品だって、浅く広くわかりやすい絵にはしてあるけど、コアなネタもいっぱい入れてあるんですよ。彼女の腕にジョン・F・ケネディの命日を意味する数字を描いたり、ケネディ家の紋章を入れたりしています。
作品を買ってくれる人には、それぞれどんなネタを潜ませているのかを説明します。ただ見に来ただけの人には、説明してもよさをわかってもらえないと思うんです。ひとつくらい画集を持っているのならいいけど、口先だけ「ファンだ」って言う人は信用できない。でも買う人はすごく真剣で、自分の収入、つまり血と汗を流して稼いだお金を、絵と交換しています。お金を払ってでも欲しいと言って買ってくれる人は、信用できるんですよ。
──過去に手掛けられたエアロスミスのアルバム『Just Push Play』(2001)のジャケットのような、わかりやすい「セクシーロボット」は制作活動の一端にすぎないのであって、空山さんが描き下ろしで描きたいものは、タブーを冒した作品なのでしょうか?