長野市の長野県立美術館で「再編する ― NAMコレクションの現在」が開催されている。会期は6月7日まで。担当は同館学芸員の茂原奈保子。
2026年は長野県誕生150周年にあたる。また同館の前身である信濃美術館の開館から60年、そしてリニューアル・オープンから5年の節目だ。開館以降積み重ねられた同館のコレクションは、長野県にゆかりのある作家の作品や風景画を中心に始まり、近年では国内外の近現代美術へと広がり、その所蔵数は5800点あまりに上る。
本展は、こうした地域の歴史そのものといえる多彩なコレクションを、平田尚也、Barrack(古畑大気+近藤佳那子)、佐藤朋子という長野県にゆかりのある3組のゲストアーティストを迎えながら紹介。コレクションの価値を再定義するとともに、今後の美術館のあり方にも着目するものだ。

「彫刻」そのものと向き合う
展示は3章構成となっている。第1章「彫刻という場」は、高い吹き抜けをもつ1階の展示室を舞台としている。ここでは、平田尚也の作品とともに、同館の持つ彫刻コレクションが展示されている。平田は1991年長野県上田市生まれ、埼玉県在住。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。デジタルテクノロジーの進展により身体の仮想化が進む今日において、身体性やアイデンティティの変容を彫刻というメディウムそのもの問いながら探求しているアーティストだ。


担当の茂原はまず、長野県立美術館の彫刻コレクションを代表する作家として、清水多嘉示(1897〜1981)と中谷芙二子(1933〜)の2人を取り上げた。清水は諏訪郡原村出身で、現在の帝国美術学校(現在の武蔵野美術大学)の創設者のひとり。日本近代彫刻に大きな影響を与えた彫刻家だ。いっぽうの中谷芙二子は札幌市生まれ。大阪万博ペプシ館(1970)にて人工の霧を大量に発生させる「霧の彫刻」を初めて発表し、以降はヴィデオ・アートを軸にしつつ、80年代以降は全国で霧の彫刻を展開している。清水の地元ということもあり、同館コレクションには清水の系譜に連なる日本の近代彫刻が豊富だ。また、中谷の《霧の彫刻》(2021)は、定刻になると美術館建築を霧で包み込む、同館のアイデンティティのひとつとなっている。まったく異なるふたりの作家だが、双方がともに「彫刻」であることは、本章の主題となる問いかけとして機能している。

展示室に無秩序に並ぶのは、裸婦や胸像をはじめとした、近代の人体彫刻の数々だ。ここに、ウェブ上に無数に落ちているパーツ「アセット」を仮想空間で組み合わせて彫刻を制作し、レンチキュラーや3Dプリント、映像などで出力された平田の作品が混ざり合う。「彫刻」という概念を分解するような平田の作品は、展示されているブロンズ像が持つ「裸婦」や「胸像」といったモチーフを弱め、造形そのものに目を向かわせる。

なお、今年4月に世を去った県内出身で平田の大学時代の恩師でもある戸谷成雄(1947〜2026)をはじめ、土谷武(1926〜2004)や山崎豊三(1955〜)といった、現代彫刻作家のコレクションも同じ空間に並ぶ。「彫刻」というメディアが有する多面性が、より露わになる。




































