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「椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる」(十和田市現代美術館)開幕レポート。あらゆる像(ゾウ)を通じて、自由とは何かを問い直す【2/3ページ】

部屋のなかの象(ゾウ)が示すものとは?

 企画展示室に入ると、眼前に現れるのは巨大なピンクのバルーンと大きな目だ。歩みを進めていくにつれて、歪んだそのかたちが象(ゾウ)の頭部であることがわかっていく。《the Elephant in the Room XL》(2026)と名付けられた本作は、英語の慣用句「Elephant in the room(部屋のなかの象)」に由来する。誰もが気づいているのに、大きくて扱いづらい問題やタブー視されてきた事実を、あえて避けてしまう状況を指す言葉だ。

《the Elephant in the Room XL》(2026)

 また、この展示室で本作と向き合うように設置されているのは、約7000個の人形用の眠り目を集結させた円盤状の過去作《メタポリス》(1999)だ。あえて黙殺される巨大な象(ゾウ)と、現代社会における「監視」とも捉えられる無数の目玉。2作品が向かい合わせに展示された空間は、SNSなどで相互監視される現代社会を生きる、我々の日常を表しているといえるだろう。

《メタポリス》(1999)。円盤が回転することによって人形の眠り目が開閉する
《メタポリス》(1999、部分)

 続く小さな展示室に現れるのは、椿の脳内を可視化したかのような制作スタジオ《The Order of Time》(2026)だ。ここでは絵画作品やビリヤード台、棚、書籍、DVD、模型の数々が並ぶ。学生時代の初期作品から、美術史を語るうえで外せない「革命児」たちへのオマージュ、そして本展にまつわる資料までが、ある一定の規則をもって配置されている。「進化ではなく、ただ変化し続けることが重要だ」と語る椿。40年のキャリアを持つアーティストがいかにして思考を巡らせ続けているのか。椿が提示する「フリーダム」のかたちが、この濃密な空間に可視化されている。

《The Order of Time》(2026)。右の壁面にあるのは、椿が京都市立芸術大学の3回生のときに制作した絵画作品(1974)
《The Order of Time》(2026)内には本展における一番最初の設計図も展示されている