第4章「想像的地表にあふれる光」
最後となる第4章「想像的地表にあふれる光」は90年代から晩年にかけての作品が展示される。
2001年以降、断続的に描かれた「4ツの始まり」シリーズは、イーゼルに立てた状態で展示されている。「中西夏之新作展 絵画の鎖・光の森」(渋谷区立松濤美術館、2008)で試みられたこの展示方法も、福元は「絵画が地面や壁に接面していない『不安定』な展示形式」と評する。いっぽうで鑑賞者は絵画の裏に回ることができ、また下から覗き込むことさえ可能になるため、「板に貼られた帆布に描かれている」という絵画というメディアの平面性をより実感することにもなるだろう。では、その平面を超越するために中西が何をしたのか。このイーゼルを用いた展示はそういった問いをも喚起する。

本章の最後を飾るのは、中西最晩年の作品《連れ舞》(2015)だ。俵屋宗達《舞楽図屛風》(17世紀、江戸時代)に着想したという本作は、二曲一双の屏風のように寄り添う。演舞のような運動性を感じる「☓」型の連続が、キャンバスの右上方向に向かっていく。いっぽうで判然と平面性を主張する白と黒の長方形は、周囲の文様に奥行きを与えている。本作からは、鑑賞者がここまでに辿ってきた、中西の数々の試みを追憶するような体験が得られるだろう。

最後に改めて、本展担当の福元が投げかけた「不安定」というキーワードを考えてみたい。こうしてその画業を辿ってみれば、たしかに中西の作品には図像や色彩において「不安定」を志向し、その均衡がもたらす緊張感が通底している。いっぽうで、実際にその絵画を前にすると、不安定とは真逆ともいえる、絵画の持つ確固たる強度に圧倒される。描かれたモチーフの図像的意味やマチエールの質感に頼らずとも、キャンバスの上の要素の構成によって周囲の観客を巻き込んでいく説得力。むしろ中西は自身の安定した技術と色面の構成が生み出す強く安定した力を超えるため、「不安定」に求め続けたのかもしれない。まさに絵画というメディアのもつ可能性を極限まで突き詰めた中西の、類稀な創作を体感できる展覧会といえるだろう。




















