東京・丸の内にある三菱一号館美術館で、「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」が開幕した。会期は5月24日まで。担当は同館上席学芸員の野口玲一。
本展は、最後の浮世絵師のひとりと呼ばれる小林清親(1847〜1915)から、明治末期に浮世絵復興を目指した新版画を手がけた吉田博(1876〜1950)、伊東深水(1898〜1972)、川瀬巴水(1883〜1957)らの作品を通じて、江戸時代末期から昭和初期までの風景版画の流れをたどるもの。アメリカ建国250周年となる今年、スミソニアン国立アジア美術館から里帰りした、ミュラー・コレクション選りすぐりの浮世絵・新版画・写真約130点と三菱一号館美術館の所蔵品から構成されている。
本展は大きく2部構成となっている。第1部「小林清親と浮世絵」では、清親の画業を紐解く前に、明治期の文明開化のなかで制作された浮世絵「開化絵」が紹介される。庶民の生活にも影響を与えた、急速な西洋化の様子が作品から読み取れる。鮮やかな色彩で描かれた、新しい文化を楽しむ人々の姿からは、変化を前向きに捉えようとする姿勢が感じられる。

しかしこの文明開化によって、新しい印刷方法やメディア、写真技術が流入し、浮世絵が徐々に衰退したことも事実だ。そんな時代に、夜明けや夕暮れ、闇、雨や雪景色の光に注目し、陰翳のなかの光の繊細な変化を描いたのが清親だ。その作品は「光線画」と呼ばれ、光と陰影のコントラストを強調して描く点が特徴だ。描かれているのは夕暮れと夜にまたがる黄昏時が多い。本展タイトルの「トワイライト」とは、このように清親が好んで描いた情景である「黄昏(トワイライト)」を意味しているが、同時に、徐々に衰退し黄昏(たそがれ)ていく、明治以降の浮世絵が置かれていた状況も意味する。



当時、清親の作品は、従来の浮世絵とは一線を画す新しさがあると高く評価された。特定の画派には属さなかったため、それらの技法をどのように身につけたかは定かではないが、日本に入ってきたばかりの写真というメディアから影響を受けていることは、ほぼ間違いがないそうだ。担当学芸員の野口は、写真からは、その明暗や陰影による立体的な描写を学ぶばかりでなく、そこに内在していた、失われゆく文化を哀惜する視線も受け取っていたと述べている(*)。会場では、清親の作品とともに、当時撮影された写真も紹介されており、双方の影響関係を比較しながら鑑賞することができる。
なお本章では、清親の影響を受けた2名の絵師、井上安治(1864〜1889)と小倉柳村(活動期1880〜81)の作品も紹介されている。


*──『トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで』公式図録、p32より
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