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「中西夏之 緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置」(国立国際美術館)開幕レポート。不安定な絵画に見え隠れする強度【4/5ページ】

第3章「無限遠点からの弧線」

 第3章「無限遠点からの弧線」では、70年代から80年代にかけての竹弓、そし象徴的な紫、そして巨大な「ℓ」型の線を取り入れた絵画シリーズを紹介している。

 73年頃、中西はキャンバスの縦辺を、巨大な曲線の一部として捉えるという発想にたどり着く。これを端的に表現したのが、弧の一部に見立てた曲がった竹弓をキャンバス表面に接合した「弓形が触れて」や「arc・ellipse」シリーズだ。ここに来て、中西の絵画表現はキャンバスの平面から、その垂直方向、つまり鑑賞者が立つ空間までを問題にするようになっていく。

左から《arc・ellipse Ⅴ》《arc・ellipse Ⅵ》《arc・ellipse Ⅶ》(すべて1980)、竹弓による曲線は実物を斜めから見ることで初めてそのコンセプトが理解できる

 その後、中西の海外には象徴的な紫の色彩が登場する。「紫・むらさき」シリーズを見ると、白を基調とした「☓」型の連続のなかに現れる、立体的な紫の色彩が竹弓に成り代わるような役割を果たしていることがわかるだろう。白の比率を変えながら塗り重ねられたその紫は、被写界深度の浅いレンズが生むボケのような効果をもたらし、平面的なキャンバスから鑑賞者に向かってくる、垂直方向の運動性を生んでいる。

 「ℓ字型―左右の停止」「LℓR―目前のひびき」「白、緑より白く」といったシリーズでキャンバス上に現れる大きな「ℓ」は、2つの交差する円弧という発想から生まれた。やがてこの「ℓ」は後退していくが、代わりに「大括弧」や「中央の速い白」といったシリーズのように、無数の色点とともに鮮やかな緑が現れる。この緑は平面的かつ無機的であり、周囲の複雑な描点や短線の立体感をより強調しているようにも感じられる。

左から《紫・むらさき XVII》(1983)と《紫・むらさき XVI》(1982)。紫の部分が周囲の色彩とは異なる位相にあることが印象付けられる
左から《大括弧Ⅴ》(1989)、《白、緑より白く-Ⅵ》(1988)。「ℓ」と鮮やかで平面的な緑の出現と後退していく過程にある作品

編集部