石川県金沢市に3月7日、新たな現代美術のギャラリー「YAMADART」がオープンした。こけら落としとして、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト・更谷源による個展「TAMA」が開催中。会期は4月19日まで。
更谷は1980年生まれ。漆芸家の家に生まれ、父・更谷富造のもとで技術を学んだのち、東海大学で芸術とデザインを学び、京都で漆芸家・竹田省に師事した。2012年にニューヨークへ拠点を移して以降、漆の可能性を拡張する立体作品を発表している。
更谷にとって日本で初となる本展では、大小様々な漆の球体作品が展示されている。ギャラリー1階では、直径約2メートルの漆による球体作品を中心に展示。3階では、直径7センチから72センチまで、黒と赤の2種類の漆の球体を組み合わせたインスタレーションが展開されている。

更谷は本展の開幕に際し、「丸という極めてシンプルな形態は、誰が見ても直感的に美しさを感じることができる。いっぽうで、完全な球体を漆によって制作することは高度な技術を要する。漆を専門とする職人から見ても難易度が高く、そして鑑賞者にとっては直感的に魅力が伝わるものといえる」と語る。
作品は、丸みのある芯材に麻布を貼り込み、漆と錆を何層にも重ねながら形を整えていく「乾漆」の技法によって制作されている。仏像制作にも用いられてきた伝統技法であり、型を使わずすべて手作業で制作される。各層ごとに研磨を施し、さらに数層の仕上げ塗りを重ねることで完成するため、1点の制作には数ヶ月を要するという。

漆は、日本、中国、東南アジアに自生するウルシの木の樹液から採取される天然素材であり、特定の温度と湿度条件下で化学反応を起こして硬化する。形成された塗膜は非常に強靭で、環境条件によっては1000年以上の耐久性を持つとも言われる。更谷はこうした素材の特性に着目し、「自分がつくった作品が1000年後、2000年後にも残る可能性がある。作品はある意味でタイムカプセルのような存在でもあり、未来へと技術を伝える媒介となりうる」と述べる。
漆の表面は一見すると深い黒色に見えるが、実際には透明な漆を何層にも塗り重ねることで生まれる色であり、光の当たり方によって内部のテクスチャーがほのかに透けて見える。また、漆は時間の経過とともに色が変化する性質を持ち、年月を経ることで表情が変わっていく。鑑賞者は、作品を長い時間のなかで味わうことになる。
更谷が現代美術という文脈で漆作品を制作する背景には、漆産業の現状に対する問題意識もある。家庭で漆器を日常的に使う文化が薄れ、伝統工芸だけでは産業を維持することが難しくなっているなか、現代美術という領域で漆の新たな可能性を提示することで、素材そのものの価値を広げたいと考えているという。「本物の漆に触れる機会を増やすことで、人々が漆の良さを感じ取れるようになる。そうした体験を通じて、漆の美しさや価値を少しずつ伝えていくことができればと思っている」。

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