ジェフ・クーンズ「PAINTINGS AND BANALITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」(エスパス ルイ・ヴィトン大阪)開幕レポート。クーンズ40年の創作の軌跡がここに【3/3ページ】

 本展タイトルにある「Banality(陳腐)」を冠するシリーズでは、2つの磁器の作品──《Woman in Tub》(1988)と《Wild Boy and Puppy》(1988)に注目したい。《Woman in Tub》は、ロココ様式の磁器人形を彷彿とさせる緻密な技巧が施されており、浴槽の裸婦がシュノーケルの気配に驚くという卑俗な場面は、美術史の伝統的な「水浴図」をポップに読み替えたものだ。頭部を欠いた女性の身体は、鑑賞者の「覗き見る眼差し」を強く意識させ、自らの欲望や客体化のメカニズムを直視させる装置として機能している。

奥から《Woman in Tub》(1988)、《Wild Boy and Puppy》(1988)
© Jeff Koons Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo ©︎ Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 いっぽう《Wild Boy and Puppy》では、少年、陽気な犬、玩具という凡庸なモチーフを強調することで、「陳腐さ」を新たな次元へと高め、社会を映し出す鏡として機能させようとするクーンズの意図が読み取れる。

 「ありふれたもの」を内省と歓びの空間へと変容させるクーンズの魔法は、鑑賞者自身のアイデンティティを映し出す鏡となり、美や喜びといった普遍的な概念を問いかけることだろう。

左から、《Little Girl》(1988)、《Woman in Tub》(1988)
© Jeff Koons Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo ©︎ Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

編集部