世界的に知られるアーティスト、ジェフ・クーンズの初期の作品に注目する展覧会「JEFF KOONS:1979-1999」が、3月23日〜4月26日の会期で香港のArt Intelligence Globalで開催される。
1955年にペンシルベニア州ヨークで生まれたクーンズは、シカゴ美術館附属美術大学とボルチモアのメリーランド・インスティチュート・カレッジ・オブ・アートで学び、76年に後者で学士号を取得して卒業。77年にはニューヨークに移住し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のメンバーシップデスクで勤務しながら、並行して彼の最初の正式なシリーズとなる「Inflatables」の制作を開始。79年にはMoMAの仕事を辞任して本格的な芸術制作活動をスタートし、翌年、初の個展となる「The New」をニューヨークのニューミュージアムにて開催。その後の20年にわたり、大胆で独創的で独自の存在感を放つ作品を立て続けに発表し、一気に世界的な名声を得た。
本展は、クーンズにとって非常に重要な意味を持つこの初期の20年の間に制作された10のシリーズのうち7シリーズを紹介するもの。展示作品の大部分は世界的に著名な個人コレクションから貸出されアジア初公開となり、クーンズが美術史と文化シーンにおいて確実な足跡を残した重要な20年間を振り返る。
レディメイドにインスパイアされた「Inflatables」(1978-79)を皮切りに、「Pre-New」(1979-80)への移行を通じ、人間の欲望、アートとオブジェと鑑賞者の関係性、日常的なものを崇高なものへと昇華させるなどのテーマに関心を持ち始めた。「Equilibrium」(1983-93)では、願望と社会的流動性を探求し、夢と実存的現実のバランスについて探求。「Statuary」(1986)は、光沢ある表面を持つ素材を使用することで、私たちの欲望を私たち自身に反映させるという表現し、「Banality」(1988)は、平凡で馴染みあるものの魅惑的な魅力をあえて存分に楽しみ、審美眼の判断やヒエラルキーを削ぐことを実現した。「Made in Heaven」(1989-91)は「凡庸」の哲学をセックスにまで拡張し、生物学的な肉体的欲望を取り巻く恥と罪悪感を中和しようと試みた。「Easyfun」(1999-2000)は、アメリカの消費文化における欲望の役割にスポットライトを当てることで、現代文化を映し出す鏡の役割を果たした。
本展について、クーンズは次のようにコメントしている。「今回、香港でこのような展覧会が開催されることを光栄に感じている。展示される作品は、私がアジアにおいて展示されることを非常に誇りに思う作品たちだ。私はつねに東洋の文化と哲学にインスパイアを受けてきており、作品制作にも東洋の信念と知識を取り入れることで、自分の作品のなかに唯一性を見出したいと願ってきた。展示される作品は、例えば先入観を取り除き受容する力を受け入れる重要性など、東洋と西洋の両方の文化に存在する普遍的な資質を浮き彫りにしている」。
また、Art Intelligence Globalのファンディング・パートナーである寺瀬由紀は「今回、このような美術史的に大変意義のある作品を中心とした素晴らしい展覧会を弊社のスペースにて開催できることを大変嬉しく思っている」とし、次のような期待を寄せている。
「ジェフ・クーンズの初期作品が体系的に展示されるのは、今回が美術館含めてもアジア初と言えるので、非常に貴重なまたとない機会だ。我々は益々力をつけるアジア人コレクターに、世界最高峰の美術をご紹介することを信念に活動しており、今回の展覧会もアート・バーゼル香港の時期に合わせたその一環だ。ぜひ多くのお客様にご来場いただければ」。