「向井山朋子 Act of Fire」(アーツ前橋)レポート。地下劇場を歩き、暗闇に眠る記憶を見つめる

アーツ前橋で「向井山朋子 Act of Fire」が開催されている。会期は3月22日まで。

文=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部) 写真提供=アーツ前橋(撮影=木暮伸也)

展示風景より、《KOKOKARA》(2025)

 アーツ前橋で、ピアニスト・美術家として国際的に活躍する向井山朋子(1963〜)の個展「向井山朋子 Act of Fire」が開幕した。会期は3月22日まで。キュレーションを務めたのは同館チーフキュレーターの宮本武典。

 オランダ・アムステルダムを拠点とする向井山は、ピアノ、映像、パフォーマンス、インスタレーションといった既存のジャンルを越境する表現者だ。向井山にとって美術館での初の大規模個展となる本展。タイトルの「Act of Fire」には、作家の身体と記憶に根ざす喪失・抵抗・怒りを燃焼させる「儀礼」の意味が込められている。同時に、ジェンダーの不平等、深刻化する自然災害、終わりの見えない他国への侵略といった現代社会の諸問題を、「火」という根源的なメディアを通して照らし出すという意味も重ねている。

展示風景より、《wasted》(2009)
《wasted》(2009)の展示風景。経血の染み込んだ女性の衣服がすりガラスの奥に見え隠れしており、向井山のパーソナルな記憶を覗き込むようでもある

編集部