会場では、6つギャラリーをひとつの地下劇場に見立てた回廊型のインスタレーションが展開されている。
展示空間に足を踏み入れると、そこにあるのは「闇」だ。一階の展示スペースは誰もが立ち入れる無料エリアだが、訪れた者は暗闇が支配するこの空間に戸惑いを感じるだろう。しかし、耳を澄ませると地下からかすかにピアノの旋律が聞こえてくる。その音源を探すため、鑑賞者は誘われるように地下空間へ降りていく。

地下へ降りる階段の正面で待ち受けるのは、モニターに映し出された赤く巨大な月だ。不吉な前兆とも浄化のしるしとも取れるこの象徴的な月を背に、鑑賞者は回廊の奥へと進むことになる。

暗闇にゆらりと浮かぶのは、代表作のひとつである《wasted》(2009)。夫をガンで亡くした向井山が、大切な人の死に直面しながらも、なお毎月流れ出ていた経血を衣服に記録した作品だ。血の滲む衣服を前に一瞬たじろぐものの、それが生命の証でもある経血であると理解したとき、不思議と緊張が和らぐ感覚を覚える。先ほど目にした赤い月のイメージが、本作とも呼応しているようにも感じられる。





















